吉野弘「生命は」

※以下は、是枝監督・ペドゥナ主演の「空気人形」(日本映画 2009年)から聴き取りをし、黄色い羊(私)の好みに合わせて句読点をつけたものです。よって作者の原文とは異なる部分があります。十分にご注意ください。



生命は、
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい

花も、
めしべとおしべが揃っているだけでは不充分で、
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする

生命は、
その中に欠如を抱いだき、
それを他者から満たしてもらうのだ
世界は多分、他者の総和

しかし、
互いに欠如を満たすなどとは
知りもせず知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄

ときに、
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?

花が咲いているすぐ近くまで
虻(あぶ)の姿をした他者が
光をまとって飛んできている

私もある時、
誰かのための虻だったろう
あなたもあるとき
私のための風だったかもしれない



                 詩集『風が吹くと』1977年

                      

2019-12-10

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