若き日のイ・ビョンホンの魅力があふれる作品。そこに立ってるだけで美しいのはなぜ?

作品情報
●評価 3.5★★★☆
●制作 2005年
●上映時間120分
●原題 달콤한 인생(甘い人生)
●英語題 A Bittersweet Life
●監督 キム・ジウン
●脚本 キム・ジウン
●出演
イ・ビョンホン、シン・ミナ、キム・ヨンチョル、ファン・ジョンミン、オ・ダルス他
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男も女もイ・ビョンホンにはまる映画
この映画は、イ・ビョンホンを愛するすべてのファンのためにある。
また、これ一本見ればイ・ビョンホンを知らない人も彼の魅力にはまる・・・
見終わったら、胸がいっぱいで言葉がでなかったほど。
主人公キム・ソヌのあまりの孤高感、悲しいほどの美しさをイ・ビョンホンが見事に演じてくれた。・・・もーっすばらしい!
彼以外に、この主人公を演じられる人っているんだろうかと思うほどだった。
圧倒的存在感! あふれるほどのカリスマ感!
イ・ビョンホンも「この映画は自分の代表作になる」と直感されたそうだが、まさにその通りで、この映画を通じて、イ・ビョンホンってかっこいい!すげー!日本にはねーぞこの神スター感! ってぶったまげた人は多かったのではなかっただろうか。わたしは映画はじまった3秒で惚れたのを覚えてる。
彼の清潔感のある低音ボイス、テンポを崩さない歩き方、スターゆえの孤高が宿る視線、まっすぐ伸びた背筋、ワンテンポ置いてから話し始める口調。
どれもが作られたチープな感じがなく、過去につらい体験でもしたのかしら?と思わさんほどの孤高感があふれていて、ほんとうに身の毛がよだつほどカッコいい。
回し蹴り一つとっても、回った後の体の切れの良さ、ぶれなさに、体の芯から鍛えている男ってこんなにカッコいいのね、はふん・・・とため息がもれる。
(プライベートでもテコンドーが特技だそう)
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あらすじを一応書きますが、
表向きはホテルの総支配人、裏ではカン社長の子分でヤクザな仕事をするキム・ソヌ(イ・ビョンホン)。ある日、カン社長(キム・ヨンチョル)に愛人ヒス(シン・ミナ)の監視役を命じられるが、ヒスに恋心を抱いてしまい、彼女が他の男と浮気している場面に踏み込んでもその男を始末することができない。
それどころか、この情事をカン社長に報告せずに見逃したため、組織から命を狙われることになる。崖っぷちまで追いつめられるソヌ。カン社長への憎しみは強くなり、銃を手に入れ、ついにはカン社長と対決することになる。
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なんだ、社長の女に惚れただけでそんな大問題になるの?(ソヌは惚れただけで、手は出してません)と思われる方もいると思いますが、それがヤクザの世界なのです。
しょーもないことで切ったの張ったのするのがこの世界であり、しかも女がからむとややこしくなるのでしょーがありませんね。
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オープニングから叙事詩のような映画
この映画が他のノワール作品と一線を画しているのは、やはり、最初と最後にでてくる悲しい詩のなせる業だろう。初っぱな、なぞめいた詩が出てきて、
「これは何だろう」
「何の意味があるのだろう」
と思わせておいて、最後に、あっ!このことだったんだと膝をたたくことになる。
観客は、流れるエンディングロールを見ながら、何度も何度もその意味をかみしめる。この映画、じつによくできてるなぁ・・・そうだったのかと深くため息をつくのである。
わたしはこの詩が大好きなので、
オープニングとエンディングに分けて、ここに記しておきたい。
映画をまだ観ていない人は、この先は読まないでおいたほうがいいでしょう。
(オープニング)
ある春の日
風に揺れる枝を見て
弟子が尋ねた
師匠、
動いているのは枝ですか?
風ですか?”
弟子の指す方も見ずに
師匠は笑って言った
動いているのは
枝でもなければ風でもない。
お前の心だ
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(エンディング)
ある秋の夜
夢から覚めた弟子が泣いていた
その姿を見た師匠が
不思議に思って聞いた
怖い夢か?
いいえ
悲しい夢か?
いいえ。
甘い夢でした
では、なぜ泣くのだ?
弟子は涙をふきながら
低い声で言った
その夢はかなわないからです
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甘い人生。
甘美な人生を夢みて、人は喜ぶのではなく、
さめざめと泣く。
夢は、叶わぬものだから。
ソヌは、カン社長の手下に追いかけられ、穴に埋められたり、ナイフでぶっ刺されたり、マシンガンでがんがんに撃たれまくって血管はずたずた肉片もぼろぼろになっていくが、それでも死ぬ最後の最後まで彼がうつくしく見えるのは、なぜだろう・・・
自分の人生に嘆いても、最後は受け入れる男の美学に感動するからなのか。
「甘い人生」は、監督キム・ジウンが描きたかった男の美学(孤高)とイ・ビョンホンというスーパースターが見事に共鳴した傑作である。
2005年というひと昔前の作品だが、今みてもまったく古びた感じがしない。
ぜひ観てください。
そして、ふかーいため息を一緒につきましょう。
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