家族

パク・ヘイル主演、コン・ヒョジン、ユン・ジェムン出演「ブーメランファミリー」(2013)

2019-12-18

アイゴー!いい年こいて、会えばケンカばかりする出戻り3兄弟妹。母さんはあんたたちの財布か?!

作品情報

●評価 3.0★★★
●原題 고령화 가족(高齢化家族)
●原作 チョン・ミョングァンの同名長編小説(2010年)
●2013年製作
●上映時間
●監督 ソン・ヘソン
●脚本 キム・ヘゴン、ソン・ヘソン、キム・ジファン
●出演
オ・インモ、次男、映画監督(パク・ヘイル)
オ・ハンモ、長男、ぷーたろー(ユン・ジェムン)
オ・ミヨン、末娘、カフェ経営(コン・ヒョジン)
お母さん、キム・ナムシム、化粧品訪問販売(ユン・ヨジョン)
ミヨンの娘、中学生、シン・ミンギョン(チン・ジヒ)
ミヨンの夫(チョン・ヨンギ)
ミヨンの恋人、保険会社員、チョン・グンベ(キム・ヨンジェ)
ヤク(薬)売人(ユ・スンモク)
キス、ハンモの子分(パク・ヨンソ)
インモの大家おばさん(オ・ミネ)
インモの妻、ソ・ミオク(イ・ヨンジン)
美容師、ハン・スジャ(イェ・ジウォン)
ミンギョンの友人、中学生(ユ・ヨンミ)
キム社長、アダルト映画社(キム・ヘゴン)
チェ部長、アダルト映画社(キム・テジン)
ミオクの浮気相手(カン・プン)
ミヨンの実父(パク・クニョン)
近所のおばさん3人組(キム・ジヨン、カン・ヒギョン、キム・ギョンエ)

あらすじ

オ・インモ(パク・ヘイル)は映画監督だ。昔から頭が良く、兄弟で唯一の大卒だ。だが、映画製作で失敗し、人生で最低の日々を送る。家賃も3ヶ月滞納し、引きこもりの毎日だ。死のうと思って首つりをする直前、母から電話がかかり「鶏雑炊を作ったから食べにおいで」と言われ、自殺を思いとどまる。

荷物をまとめて実家に戻ると、そこには母に寄生する長兄(オ・ハンモ)がいた。ハンモは弟が出戻ったと聞いて驚く。数日すると、妹のミヨン(コン・ヒョジン)までも娘ミンギョンを連れて出戻る。夫に殴られもう離婚すると息巻いている。これで2度目の離婚だ。

化粧品の訪問販売をしてほそぼそと生計を立てる母(ユン・ヨジョン)は、いい年した子供たちが出戻っても愚痴一つ言わない。だまって肉をたくさん買ってきて、毎日美味しい料理を作ってあげる。ケンカをしながらも家族は同じ鍋で食事をする。

優しい母と高齢の子供3人と孫一人。個性が強くて気難しい家族が一つの屋根の下で暮らすドタバタファミリームービー。母の愛に甘えたまま暮らすのか、自立を模索するのか。それぞれ傷ついた人生を抱えた子供たちは母の下で人生を模索する。コメディでありながら、家族のあり方や再生を問いかける社会派作品。



※ここから先はネタバレが含まれます。未だ御覧になってない方は読まないことをお勧めします。


ひたすら子供たちを愛する母の愛。自立しようと模索するバカ息子と娘。成功パターンの家族例。

1.傷ついた子供をひたすら癒す母親の愛

この映画で一番感動したのは、子供に対する母の誰にも負けない深い愛だ。

次男インモが首つり自殺直前に、鶏雑炊を作ったから実家に食べにおいでと優しい電話をかけて命を救ったり、さらに、出戻った直後金をせびる彼にお小遣いをあげたり(無職の長兄ハンモも乗じて金をせびる始末)、娘ミヨンの出戻りさえも結局は受け入れてあげる。


家族の中で、ただ一人朝から働いて、お肉を大量に買ってきては夕ご飯をせっせと作り、熱々の鍋をみんなにふるまう。席についても自分がご飯を食べる暇はなく、菜箸(さいばし)で子供や孫のミンギョンにせっせとおかずを運んであげる。卓上には、たくさんの種類のおかずの他、酒瓶もあり、ここは高級屋台かと思わせるような食卓だ。

たかが、化粧品の訪問販売をしていて、これだけの家族を毎日食べさせる母親の金銭的負担と労力は並大抵のものではないだろう。それでも母親は愚痴の一つもこぼさず、「家族だから」と笑顔をたやさない。にも拘わらず、子供たちは事あるごとに相手の欠点をあげつらい、小さな過去の恨みの罵詈雑言を相手にぶつけていがみ合う。そんな子供たちに心を痛める母。オモニ役のユン・ヨジョンは、そんな切ない母心を見事に演じていた。

肉を買いに行った際、ぼーっと疲れた顔をして待つオモニの表情が家族をつなげることの大変さを物語っている。母役ユン・ヨジョンさんのこの表情、十八番ですね。「バッカスレディ」を思い出す。人間は本当にどうしていいかわからない時、少しでも心の負担を失くそうと能面のような顔になるのかもしれない・・・。

肉屋で待つ間、魂が抜けたようにぼーっとする母(ユン・ヨジョン)

ちなみに、この映画、食事のシーンがすこぶる多い。とにかく多いのだ。泣いて笑ってケンカして食事、また怒って殴り合いして食事。抱き合って罵りあって食事。喜怒哀楽の感情の合間に必ず食事のシーンがこれでもかと登場し、家族がそれぞれぶつくさ言いながらも、母が作った食事を囲ってむしゃむしゃ食べる。


血がつながっていない家族をつなぐのはまるで食事だと言わんばかりに、湯気が立つほかほかの白飯と鍋、脂ぎった豚肉が野菜とともに出て来る。食事をしている時、人は必然的にガードが外れて無防備になり、優しい顔になる。

食事は母の愛の隠語だろう。
この映画が一番表現したかったものが大量の食事シーンを通じて表現されている。ああ、腹へった。

これでもかと出てきた食事のシーン。これぞ母の愛だ。

2.母の愛に癒されて再生する長男と次男。再々婚する末娘。パク・ヘイル、コン・ヒョジン、ユン・ジェムンが好演する!

左から、パク・ヘイル、コン・ヒョジン、ユン・ジェムン
韓国を代表する人気役者となった3人

この映画は、最後は母の愛に癒された長男や次男が再生をかけて歩き始めるというところで終わる。末娘は再々婚をする。そして、それが成功しようとしまいと映画はその結果を問わない。人間にとって肝心なことは過程なのだから。

いつもケンカばかりしてハプニングの多い家族。次男は喫煙をネタに姪のミンギョンを脅してお小遣いをカツアゲする。ミンギョンの母ミヨクは、離婚後は尼のように暮らすと言いながらすぐに男をつかまえて結婚すると言い出す。長兄ハンモはミンギョンのパンツを頭からかぶり、美容師のスンジャを忘れようとオナニーをして見つかり、自殺未遂をする・・・(笑える)。

とにかく騒動が多すぎて気が休まらない家族に嫌気がさした姪ミンギョンが家出をしたことで、家族はやっと心を一つにし始める。悩んだ長兄ハンモは組織に身を売る見返りとしてミンギョンを取り戻す。次男インモは、組織を裏切ったハンモの代わりに捉えられ、半殺しの目に合うが兄のために死ぬなら本望と覚悟を決める。兄はそんな弟を見捨てずに弟を助けるために戻り、組織に落とし前をつけて、組織とは手を切る。

そう。最後はハッピーエンドに終わるが、家族をもつって、こういった山あり谷ありを「楽しむ」気持ちがないともてないなぁと思わせてくれた作品だ。

このオモニのように石垣に咲く花を見て「わたしのようだ」と喜んだり、苦労が多かったにも拘わらず、「幸せな人生だった」と即答できる鈍感に近い鷹揚(おうよう)さがないと、バラバラな家族の心を一つにまとめるのは無理だろう。

いや、いっそのこと難解な心なんてものを一つにまとめようとせず、せっせと食事を作って食べさせておけば、何とかなるのかもしれない。母の苦労を見て、申し訳ないと思う子供たちだから、これはニートに終わらずに済んだ成功ケースだ。

インモは映画監督に復帰。ベッドシーンは任せろだ。ハンモは美容院のあこがれスジャさんと結婚して第一子が生まれる。ミヨンは、保険会社員のクンベと再々婚。

そして、オモニは、なんとミヨンの実父と暮らし始める。
そう。昔の不倫相手と再燃だ。オモニの人生は、実は破天荒な人生だった。
破天荒ゆえに、子供たちが人生につまづいて悩んでいる気持ちが痛いほど分かったのだ。だから、責めることなく優しく尽くした。


手には買ったばかりの豚肉をぶら下げて、夕日の中、オモニはダーリンが待つ我が家に向かうのであった。こういうエンディングもいい。

今度はオモニが幸せになる番だ!

「ラブレター ~パイランより」のキム・ヘゴンが脚本を書く

キム・ヘゴン氏(役者・脚本家)

キム・ヘゴンというと役者でもあるが、わたしのイメージだと「ラブレター ~パイランより」(2001)の脚本家のイメーじがすこぶる強い。いずれ右作品もここにレビューを上げたいと思うが、いずれもソン・ヘソン監督と組んだ脚本作品がこれまで成功してきたように思う。

「ラブレター ~パイラン」でのパイラン(セシリア・チャン)の純粋で健気(けなげ)な生き方と三流極道のガンジェ(チェ・ミンシク)の切ない偽装結婚が愛と再生の物語へと転じた作品があまりにもすばらしくて記憶に残っているが、そのキム・ヘゴン氏が「ブーメラン・ファミリー」の脚本もソン・ヘソン監督と共作している。

本作も「ラブレター」と同じ匂いを感じるのは私だけだろうか。

「ラブレター」では偽装結婚により偽装夫婦が誕生したが、本作では、ハンモ・インモ・ミヨンという3人の子供の父親がすべて異なるが、オモニは「家族」という単位でこれを呼び、一つ屋根の下で、一つ食卓を囲んでごはんを食べる。


つまり、家族が誕生する現実は理想を超えてはるかに複雑だが、それでも「家族」という共通意識を育てることにより、疑似家族が成立する。そこには何の問題もない。母からすれば、血のつながり以上に、一緒に暮らしてきたという「思い」が家族を結びつけるのである。「ラブレター」と同様、家族を構成する愛という本質を深く見つめようとする試みを感じる。

ちなみに、このキム・ヘゴンさん、本作ではアダルト映画社のキム社長として暑苦しく登場。インモをベッドシーン専門監督とほめ殺し、「赤い人妻」の製作を依頼。アダルト作品に気乗りしないインモは断るが、後半では、再生をかけて「スイカタイタニック」(恋におぼれるスイカのようなおっぱい女)を引き受ける。これ、ネーミングが大爆笑だった。最高!

このユーモアいっぱいの、脚本家兼役者キム・ヘゴンさんも是非見てあげてほしい。

気になるあの人---「少女たちの遺言」のイ・ヨンジンが出演

イ・ヨンジン
 左)本作ミオク役  右)「少女たちの遺言」シウン役

インモ(パク・ヘイル)の元妻ミオク役には、韓国ホラーの先駆けともいえる「少女たちの遺言」(1999)でカリスマ陸上部員を演じたイ・ヨンジンが出演している。「少女たちの遺言」では、短髪で初々しいコン・ヒョジンも出演しており、14年ぶりに一つの作品で二人が出演しているのに深い感慨を覚えてしまった。

本作でのイ・ヨンジン出演シーンは2回。どちらもセリフは短く、二人が同じシーンでセリフを交わす姿は見られなかったが、女高怪談シリーズが大好きだった私には、こういう小さなことでも小躍りするほどうれしかった。「少女たちの遺言」でのイ・ヨンジンが放った神秘的な謎少女の姿は、今でも私の胸に鮮烈な印象を残している。ちなみに、インモの大家役のオ・ミネは「少女たちの遺言」では保健室の先生役をしていた。これもうれしい。


それにしても、14年の歳月を振り返ると、「少女たちの遺言」に登場した女子学生の中でも、コン・ヒョジンの役者街道爆進ぶりは目を見張るものがある。努力と天性の賜物。本当にすばらしい。

最後の最後に。ユン・ジェムンさんの放屁に抱腹絶倒!

愛すべき、下品で下品で下品な長兄ハンモ!(ユン・ジェムン)

たぶん音声は合成だと思うのだが、ユン・ジェムンさんの下品な放屁シーンが最高におもしろかった。腰を浮かして、ところかまわず、BOO!!! っとかます面白さ。抱腹絶倒でした。

でっぷりしたお腹と少年のようないたずらっぽい表情。ガニ股で歩き回り、ゲロ吐きそうな臭い屁をしまくる。美容室のスジャさんにギョーザを毎日のように届ける一直線の愛情表現。だらしない姿で居間に寝て、妹に腹に蹴りを入れられてポカンとしている罪のない姿。最高に、下品で悶えるほど好き!

ユン・ジェムンさんといえば、主人公をいじめ役ばかりを観てきた気がするのだが、今回はまったくちがったユン・ジェムンさんを観れて本当によかった。単純だが、家族愛に満ちた愛すべき長兄ハンモを見事に演じられていて、すばらしかった! もっとこういうコミカルなユン・ジェムンさんを今後も見たい。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

毒女 悦子

韓国映画をみてハッと胸をわしづかみにされたことありませんか?
悲しい時つらい時に韓国映画を見て、心がほんのすこし救われたことありませんか? しあわせを感じたことありませんか?

わたしはたくさんあります。

韓国映画のもつ奥深さになぐさめられたり、息もできない胸苦しさを覚えたり、一日中その余韻に浸ったり、夢の中まで追いかけられたり。 韓国映画に流れるあたたかいもの、残忍なもの、切ない永遠のものに、 ずっとずっと恋をしています。

同じ気持ちの人たちとつながっていたい。

アラフィフ。老後が心配。
でも死ぬまで韓国映画を抱きしめているぞ。

-家族
-, , ,

Copyright© 韓国映画に悶える女のブログ! , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.