遊び心でコックリさんをすると痛い目に合うぞ!あいつはてごわい!

作品情報
●評価 3.0★★★
●制作 2004年
●上映時間 92分
●原題 분신사바(分身娑婆)
●監督 アン・ビョンギ
●脚本 アン・ビョンギ
●出演
キム・ギュリ、イ・セウン、イ・ユリ、チェ・ソンミン、チェ・ジョンユン、ウン・ソウ他
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※この先は、ネタバレが含まれます。未だ御覧になってない方は読まないことをお勧めします。
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切なく、情深いホラー映画
計3度観ました。
わたし、この作品は、韓国のホラー映画の中でもTop3に入るくらいお気に入り。深いです。
血どぴゅー!のスプラッターだけではなくて、きちんとした背景があって、情が散りばめられているところがなによりもよかった。
アン・ビョンギ監督はホラー映画の巨匠と呼ばれるだけある。
「ボイス」、「コックリさん」、「友引忌」とどれも切ないホラー世界を作り上げていて、観ているものに、ともに泣けるホラーをこれでもかと提供してくれる。天才ですね。
つまり、あんたは化け物は化け物だけど、あたし、あんたの無念わかるわ〜!って同情心がめちゃめちゃ湧いてくる。韓国同じみの「恨」がめらめらと燃え上がり、じわじわと復讐していく展開に、日本でいえば、桃太郎侍が現れてばっさばっさと悪い奴らを成敗してくれる並みのイケイケ感を感じる。
物語は、転校生のユジン(イ・セウン)が新しい学校に慣れずに周りからいじめられ、悲しさからコックリさんを呼び出した日からつぎつぎと異変が起こっていく。彼女をいじめた生徒たちが奇妙な死を遂げていくのだが、この一人一人の亡くなり方も絵的にすごいのでお楽しみに。
ちょうどその頃、美術の先生としてイ・ウンジュ(キム・ギュリ)が赴任してくるのだが、この美人教師のイ・ウンジュ先生こそはまさにこの学校に招かれるべくして招かれた人。運命はどこまでも彼女の潜在意識に語りかけ、軌道を外れることを許さなかった。
この村には、昔、とても悲しい事件があり、村人はみな一切語らなかったのだが、その謎が後半映画の中で明かされていく。そのおぞましい過去のできごとにわたしたちもウンジュ先生もわっと目をふせたくなる。
前世にさかのぼって「恨」を燃えたぎらせていくなんて、日本ではあまりない視点なのだが(あっても横溝シリーズの呪われし血の怨念ぐらい)、 韓国はこの「恨」を基底にして感情や物事を構築していく文化をもっているから、深くて、しつこくて、ぞっとするものが多い。
恨ゆえにやりたい放題な映画。

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わたしはさきほど桃太郎侍が悪者をばっさばっさと表現しましたが、実はこの映画の最後はそんな単純なものではなく、ひじょうに情深く終わっていくのである。なんと憎しみの対象を殺さずに終わる。
ここがこの映画の最高の見せ場だと思っています。
この最後の哲学的な終わり方で、わたしにはこの映画が忘れがたい一本となったのでした。
みなさん、是非みてください。あ、怖いので昼間にね。
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