スリルとサスペンス

韓国初のハウスミステリースリラー「時間回廊の殺人」(2017)

2019-10-24

キム・ユンジン主演! 夫は殺され、息子は行方不明。25年前その家で何が起こったのか?!

作品情報

●評価 3.5★★★☆
●原題 시간위의 집(時間の上の家)
●制作 2017年
●上映時間 100分
●監督 イム・デウン
●脚本 チャン・ジェヒョン
●出演 
キム・ユンジン、オク・テギュン(2PM)、チョ・ジェユン、パク・サンフン、コ・ウリム、ファン・ジュヌ、ウ・サンジョン、キム・ミンジョン、パク・チュンミョン他

あらすじ

カン・ミヒキム・ユンジン)は、夫チョルジュンチョ・ジェユン)と息子ヒョジェパク・サンフン)の殺人容疑で逮捕され、冤罪にも拘わらず30年の刑期を言い渡される。25年後仮釈放されたミヒは、荒れ放題の我が家に戻る。25年前、夫が息子を殺そうとしたが何者かに殺害され、息子は血痕を残したまま行方不明になっている。

ミヒの目的は息子ヒョジェを探し出すことである。あの日、ヒョジェはこの家の地下室で消えたままだ。古びた我が家はあの日のまま時が止まっていた。鏡の血の跡も、ガラスの破片もすべてがそのままだ。ミヒは喉頭癌を患っている。我が子をもう一度この手に抱きしめるまでは彼女は死んでも死にきれなかった。

ある日、福祉管理局のチェ神父オク・テギョン)がミヒを訪問してきた。神など信じなくなっていた彼女はこの若い神父を邪険にするが、神父は熱心にミヒの力になろうとした。次第に神父を信頼するようになるミヒ。なにを隠そう神父はヒョジェの昔の親友であった。ヒョジェの安否を気にかけてきたのはミヒだけではなかったのだ。

ミヒは、チェ神父に過去この家で起きた奇怪な出来事を話し始める。1984年に廉価だったこの古家を購入したこと、入居後、家族以外の誰かがいるような気配がしたこと、巫女に除霊を頼んだ時、数体の霊が現れたこと。その後、次男のチウォン(コ・ウリム)が貯水池で溺死したこと。そして今も誰かにじっと見られていることを。

チェ神父が警察でこの家についての記録を調べると、驚愕の事実が分かる。もしかしたら、全ての不幸はここに住みついている悪霊の仕業かもしれない。ミヒにこの家を離れるよう勧めるが、ミヒは息子ヒョジェを取り戻すまではぜったいに離れないと言い張る。

古家で魔界の時間が交差する日が来る。この古家の奥深くに住む悪霊がミヒに襲いかかる可能性がある。はたしてミヒは無事に息子を取り戻すことができるのか?!



※以下はネタバレを含みます。未だ御覧になってない方は読まないことをお勧めします。


時空を超えて、我が子を守ろうとする母の愛。運命を受け入れた瞬間、他の選択肢などない。

キム・ユンジンもオク・テギョン(2PM)もインタビューで答えていたが、「まず台本が非常におもしろいと思った」と言う。オク・テギョンは三度も読み直したそうだ。

わたしもまったく同感である。

この映画、見返せば見返すほどおもしろい。心から感動するのである。

この家のどこかに息子がいる。ミヒは息子を探し続ける。

まず、この映画を貫くテーマがとても好きだ。母が子を思う気持ち。しかも、「時空を超えて」愛する息子を助けようとなりふり構わない母の愛だ。余命わずかの老婆が、25年前に行方不明になった息子を取り戻すためだけに過酷な刑務所で生き抜き、出所して、古家で得体の知れない誰かと闘うこの映画はヒューマンドラマであり、それだけで観ている者の心を打つ。

結局、夫を殺した犯人は25年後のミヒキム・ユンジン)であった。夫は実子で次男のチウォンばかりを可愛がり、妻の連れ子ヒョジェを愛せずにいた。チウォンが事故死した時、夫の歪んだ父性は崩壊する。愛するチウォンが死んだのに、ヒョジェが生きていることが許せない。25年後のミヒは、ヒョジェを守るためやむなく夫を殺す。

また、そのヒョジェを連れ去ったのも25年後の自分であった。連れ去ることで、もっと平和な人生を与えることができると瞬時に判断した母の愛である。息子を25年後の世界に連れてきて、ヒョジェの親友であるチェ神父オク・テギョン)に託す。チェ神父の妻ヨニユ・イニョン)がヒョジェの新しい母になるわけだが、ヨニこそはヒョジェの初恋の人であった。25年前失踪したヒョジェを優しく見つめるヨニがそこに立っていた。

ヒョジェがヨニに渡したビー玉。25年後のヨニはこれを首飾りにしていた


この映画、最高に感動したのは、25年後の母は未来の息子から「自分を助けることは止めて、しあわせな人生をやり直してほしい」と懇願されているのにも拘わらず、息子を守りに走るところだ。息子の助けを呼ぶ声を聞くと、「これがママの運命よ」と未来の息子に切なく言いながら、夫を殺して息子を救っている。

そう。11月11日こそは、毎年、この家の中で魔界のタイムワープが起こる日であり、25年後の母は息子を守るために「夫殺し」を繰り返すのだ。通常の人間の時間は後戻りせず、未来に進んで行くだけだが、この古家の中だけは時間がゆがんだ刻み方をし、年に一度、母の愛は誰が説得しようとも何度も何度も息子を救おうとする。

いやー、こんな非現実的なストーリーにどうしてこれほど感動するのか、自分でも不思議でならないのだが、感動してしまうのだから仕方がない。実によくできた映画である。古家が醸し出す場所としての閉塞性と、時間がもつ神秘性が合わさって、この映画の独特な雰囲気を作り出している。

そして、その時空を貫いているのはただ一つ。ぶれない母の愛だった。名優キム・ユンジンが渾身の仕事を見せてくれている。

特殊な映画だが、観客に伝えることに成功している

時間往来型、つまり過去の自分と対峙したり交差するストーリーは、ともすると観客を置いてきぼりにして臨場感をぶった切る危険性があるが、この映画は杞憂にすぎない。非常にわかりやすく仕上げていたように思う。

また、古家を買ったという設定からして、昔から住みついた悪霊の仕業だと思わせるのは非常に上手いやり方だと思う。1942年、植民地時代には渡部将軍(夫婦)が失踪し、1967年には母親と二人の娘が、そして1992年にはミヒの息子が失踪している。古家が3件の不可解な失踪事件を背負うことで、ますますこの家は尋常でない不気味さを増すことに成功している。

(ちなみに、日本軍のキーワードが飛び出た時、ああ、また「日本憎し」の展開になるとイヤだなぁと心配したが、杞憂に終わりました。よかった。着物姿の日本女性(渡部将軍の妻)が登場しますが、韓国人のシン・ヘジョンさんという方が演じてました。)

オク・テギョン(左)、チェ・ジェユン(右)

あと、脇を固める役者たちも素晴らしかった。
憎まれ役の義父チョ・ジェユンの人間味ゼロのサイコパパぶりは見ものだった。なぜ警察官にも拘わらず正義感のかけらもなく、妻や連れ子にあれだけ冷たかったのか少し疑問が残るが、それでも彼という悪父がいてこその家庭崩壊だったので、良しとしたい。彼が憎らしければ憎らしいほどこの映画は成立する。

2PMのオク・テギョンは神父役で登場したが、なぜこれほど若い神父さんが?と最初は不思議に思ったが、すぐにすべての謎が解けた。ヒョジェの関連で若い神父さんなんですね。オク・テギョンの胸板の厚み(マッチョマンですから)や背の高さが気になって仕方なかったのは私だけか? キャスティングとても良かったです。

古家という狭い空間でのハウスホラー系ムービーゆえ、キャストも少なく、ほんの3人の役者さんで場をつなぐという緊張感を絶やせない映画だった。世界で活躍するキム・ユンジンは当然だが、チョ・ジェユン、オク・テギョンの二人の熱演ももちろんすばらしかった。

今週の名脇役--パク・チュンミョンさん 박준면

チュンミョンさん、本作は巫女役で登場。あの世とこの世のはざまで生きているという役柄なので、しじゅうこんな顔でした。こんなのあり?(笑) ミヒが除霊のため家に呼んでおいて、いざ霊たちがぞろぞろ集まると、驚いて「もういいから帰ってくれ!」と言われているのにかなり笑えた。

だったら最初から呼ぶなよ。

ミュージカル俳優ですが、ドラマも映画もこなせるなんでも派。「アンティーク」でも言いがかりをつける女性役で出てましたね。今後ももっともっと彼女の活躍、期待してます。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

毒女 悦子

韓国映画をみてハッと胸をわしづかみにされたことありませんか?
悲しい時つらい時に韓国映画を見て、心がほんのすこし救われたことありませんか? しあわせを感じたことありませんか?

わたしはたくさんあります。

韓国映画のもつ奥深さになぐさめられたり、息もできない胸苦しさを覚えたり、一日中その余韻に浸ったり、夢の中まで追いかけられたり。 韓国映画に流れるあたたかいもの、残忍なもの、切ない永遠のものに、 ずっとずっと恋をしています。

同じ気持ちの人たちとつながっていたい。

アラフィフ。老後が心配。
でも死ぬまで韓国映画を抱きしめているぞ。

-スリルとサスペンス
-, ,

Copyright© 韓国映画に悶える女のブログ! , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.