勘定を払わない人間は、かならず笛に踊らされ、ネズミに食い殺される

●評価 3.0★★★
●制作 2015年
●上映時間119分
●監督 キム・グァンテ
●脚本 キム・グァンテ
●出演
リュ・スンリョン、チョン・ウヒ、イ・ソンミン、イ・ミンジ他
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※この先は、ネタバレが含まれます。未だ御覧になってない方は読まないことをお勧めします。
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「恨」が徹底した映画
この映画もなんて深い作品だったのだろう。
何度考えても深くて深くて、こわい・・・。ぞっとするような映画でありました。
なんと残酷なことだろう。こんな脚本どうやって作れたんだろう。
最後まで見ると、きっとあなたはそこまでしていいんかい?と考え込んでしまうでしょう。
さすが韓国人がつくるものは日本とちがって、こうまで手厳しいのかとうなってしまう。「恨」がこれでもかというぐらい徹底的なのだ。
また、韓国の映画でおもしろいのは、それまで被害者であった人が(見るものは同情心いっぱいで観ていたのに)、最後に加害者もどきになってしまう、もしくは加害者とまではいかなくても、とても被害者として同情できない存在になってしまう点が多いことだ。この映画も例外ではない。
人を善か悪かで見るのではなく、人は被害者の要素も加害者の要素ももっていて、一刀両断できないという前提に立っている。人はそれほど複雑で、ある時は憎しみが煮えたぎるのに、ある時は愛しさがほとばしる存在である。
わたしはこういう人の捉え方が大好きである。
幾重にも人を奥深く見ることで、人を簡単にあきらめることが少なくなる。
人に望みをもつことができる。
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物語は、朝鮮戦争の時代にさかのぼる。
息子の肺病を治すためになけなしのお金をはたいてソウルに向かう父子が、途中、山の中にある村に泊まらせてもらってから不思議なことが起こり始める。
村のためにネズミを退治してあげたりして心を尽くすキム・ウリョン(リュ・スンリョン)だったが、あることから村長(イ・ソンミン)に恨みを抱かれ、手ひどい仕打ちを受け、息子ヨンナムが命を落とすことになる。
最愛の息子を失い、自分もひどい傷を負ったウリョン。
ラストは、観客の想像をはるかに超える惨劇のシナリオが待っていた。
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ざわつくほどの大量のネズミに吐く
さて、この映画、それはもうたくさんのネズミが出て来るので、ネズミぎらいな方はぜったいに見ないでください。それもドブネズミなのか、とにかく汚らしいネズミが何十万匹も出てきます。
感心したのは、とにかくその動きといい、艶(つや)といい、顔の表情といい、けっこうすばらしいのです。時代設定が朝鮮戦争という古い時代なのですが、最新のCG力と相まって、不思議な雰囲気をかもしだしている。
時折、「勘定」という言葉が登場するが、この単語はこの映画でひじょうに重要なキーワードで、一生懸命働いてくれた人にたいして、「勘定」(対価)をちゃんと支払いなさいよという意味が込められている。
「勘定」がきちんとなされない場合、どうなるか。
落とし前は必ずつけられる。その大事な命とひきかえに。
「ハーメルンの笛吹き男」はこうして韓国映画で見事によみがえったのである。
(あ、リュ・スンリョン、かっこよすぎて狂います)
