パニック

ソル・ギョングとハ・ジウォンが大波にのまれる!「TSUNAMI」(2009)

2019-09-27

正直、演技力云々よりもCGによる破壊力に息をのむ。これ、身震いするほどすごい!

作品情報

●評価 3.0★★★
●制作 2009年
●上映時間 120分
●原題  해운대(海雲台 ヘウンデ)
●英 語 題 Haeundae
●監督 ユン・ジェギュン
●脚本 ユン・ジェギュン、キム・フィ
●出演
 ソル・ギョング、ハ・ジウォン、パク・チュンフン、オム・ジョンファ、イ・ミンギ、カン・イェウォン、キム・イングウォン、ソン・ジェホ、キム・ジヨン他

あらすじ

2004年インドネシアを大津波が襲った。海洋研究員のキム・フィはその後も地震の予兆を何度も検知し、そのうちもっと大きな津波が韓国沖合で発生することを確信する。

一方、ヘウンデで漁師として暮らすマンシク(ソル・ギョング)は、インドンネシア津波の時に遠洋漁業に出ていて、親方を自分の判断ミスから死なせたことに罪の意識を感じていた。

そんなマンシクが好意を寄せていたのは、亡くなった親方の娘ヨニ(ハ・ジウォン)であり、罪の意識からずっと告白することができずにいた。ヨニも正直で働き者のマンシクに好意をもっていて、いつ告白してくれるのかと待っている。

そんな何の変哲もない喜怒哀楽を送るヘウンデ市民の日常の中、それを嘲笑うかのように日本海(東海)で地震が発生する。大津波が時速800キロのスピードで釜山の沿岸を目指して走ってくる。洪水がビルをのみ込み、道路を水であふれ返させる。

マンシクは愛するヨニの手を握り、丘を目指してひたすら走る。
逃げろ!後ろを振り向くな!愛する人を守りきれ!



※この先はネタバレが含まれます。未だ御覧になってない方は読まないことをお勧めします。


原題タイトルは해운대(ヘウンデ)

邦画タイトルは、TUNAMIとなっているが、原題は해운대(ヘウンデ)。해운대とは釜山広域市の南東に位置する区名であり、そこには国際的リゾート地として有名な해운대ビーチがある。映画はこのヘウンデビーチを舞台にしている。

ヘウンデの夏

まったく個人的意見だが、韓国映画はその題名の付け方にいつも頭をかしげる場合が多い。해운대でもそうだが、なぜパッとしない題名ばかりつけるんだろう? まぁ、TSUNAMIは日本語由来だから当然付けたくなかったのだろうとは思うが、해운대みたく一地域の名前をつけても、パッと聞いた時に国際的に伝わらないのではないかと心配する。

ヘウンデ?
ツナミノホウガヨクナイデスカ?

TSUNAMIは世界語だし、この映画はヘウンデの話ではなく、TSUNAMIをめぐる愛の物語だからだ。

2004年でこのCG力。津波の圧倒的な描写に驚く

大きな橋に襲いかかる津波。これぐらい大きいと震えがくる

この映画の製作費は160億ウォンだそうだ。日本円にして約16億円。2008年頃の韓国の年間製作費を調べると、平均約38億ウォンなので、相当な製作費を使ってこの映画は作られていることが分かる。観客動員数は11,325,228人 で歴代16位。

この映画がこれだけの数の観客を動員することができたのは、そのすばらしいCG描写にあることは間違いない。わたしも椅子から立ち上がれないほど度肝を抜かれた。あの空から降るような巨大な津波。それがじわじわと陸を目指して沖合から襲ってくる姿は、化け物そのものだ。がくがくと膝が震え、息は小さくなり、心臓が止まるかと思うほどの恐ろしさだった。


大体、人間は自分よりはるかに大きいものに畏敬や畏怖の念を抱く。山や海や空がそれだ。それが動きをもって人間を襲ってきた時、人間はどうしようもなく非力になる。

CGを担当したのは、ハリウッドの大作を手掛けてきたハンス・ウリックという米国人プロデューサー。韓国人技術者と共同してこの映画のCGシーンを作り上げたという。この年、青龍映画賞(2009)で技術賞を見事獲得している。

この津波の迫力はすばらしかったと素直に認めたい。

撮影は過酷。製作スタッフ、役者の苦労

予算がたくさんついた映画なのだから、ロケ場所や環境はそれほど苦労はなかったのではないかと思うのだが、意外と監督・キャストとも大変苦労したという。

というのも、韓国では水は貴重で高価だという。

だから、ハ・ジウォンさんとソル・ギョングさんが洪水に流されるシーン等は、もう使われなくなったプールで波を作って5日間かけて撮影されたという。つまり、このプールの水を新しく入れ替えると費用がたくさんかかるため、使い回しの水で何度も撮影をしたという。

水が入れ替えられないということは、そこに雑菌がたくさん発生し、皮膚病などの汚染源となる。さらにひどくなると眼病を発声し、のみ込むと腹痛や下痢を起こす。もしキャストに何かあったらどうするのだろう。過酷な撮影だ。日本では考えられない。

ユン・ジェギュン監督が語る「TSUNAMI」の撮影秘話がもっと知りたい方は、こちら(Movie Walker) をどうぞ。すごく楽しめます。

つまらなく何の変化もない日常が、津波で一瞬にして非日常へと変わっていく

目の前に、どんなに大きく残酷な津波が襲って来ようとも、本能として人間はまず逃げようとするだろう。愛する人を思い出したら、なおさらもっと強く早く逃げよう、生きようとするだろう。

この映画はそれをしみじみ感じさせてくれる映画だ。

正直言って、津波が起こる前までの話の展開はさほど面白かったとは言えない。少々睡魔に襲われた部分さえあった。

この映画には、4組の人間模様が登場するのだが、それほど大した感動もなければ面白さもない。そう。日常とはそんなものかもしれない。

①マンシクソル・ギョング)とヨニハ・ジウォン)のカップルのすったもんだは、ソル・ギョングの馬鹿正直な漁師役がかわいくて思わず笑ってしまうのだが、
ヒョンシクイ・ミンギ:ライフガード役)とヒミカン・イェウォン:有名女子大生役)のカップルに関しては、ヒミの少々下品な演出に興ざめするところが多く、あまり好感がもてなかった。

なぜヒミがヒョンシクに恋心を抱いたのかよく描かれていなかったので、感情移入もできなかった。よくある女子大生のワンナイトアバンチュールのようなチープな魔女感がすごくて、さすがカン・イェウォン!とうなってしまった

たぶん監督は、映画の中でよくキム・ハヌルが演じるような小悪魔的コミカルな部分を入れようと、それをカン・イェウォンに求めたのだろうが、彼女では力不足だったようだ。キム・ハヌルでは下品にならなかっただろうが、カン・イェウォンでは無理だった。万人を不快にさせずに笑わせるのは想像以上に難しい。

ごめんよカン・イェウォン。

人工呼吸の最中に、寝ぼけて
舌にかみつくヒミ(カン・イェウォン)

その他、③海洋研究員フィパク・チュンフン)とその元妻(オム・ジョンファ)と娘(キム・ユジョン)に関して言えば、元夫婦は娘のことにかんしてぎくしゃくした感情をもっており、元妻は娘ジミンにフィが本当の父親だと紹介してもいない。娘は父親の顔を知らずして育っていた。娘に自分のことを知ってもらいたいフィ。

フィと元妻。娘を思う気持ちは変わらない

最後は、④ドンチュンキム・イングウォン)と母親の家族模様だ。
息子に船を下りてちゃんと就職してほしい母親の切ない気持ち。バカ息子は母の気持ちなど分かろうともしないで、同級生のヨニ(ハ・ジウォン)に恋心を寄せる。漁業がない日は昼間から酒をのみ、ぷらぷら遊ぶ始末。

母との最後の別れになる

どの家族もそれぞれが問題を抱え、泣いたり笑ったりの何の変哲のない毎日を暮らしている。しかし、津波がくる10分前から、それぞれのカップルと家族は信じられないほどの「非日常」へと押し流されていく。

「生きる」という方向に向かってみんなが目覚めたように走り出す。
おもしろくなっていく瞬間でした。

簡単に死んでたまるか! 津波という非日常の嵐の中で生きる!という底力

やはりこの映画を見て何より考えさせられたのは、地震や津波が来た際の美学というか、生き方(去り方)を考える。一番泣いた部分だ。

上記に挙げたカップルと家族は、津波が来た際、それぞれがそれぞれを守ろうと必死で走り、励まし合い、声を枯らして名前を呼び合う。

「ぜったいにこの手を放すな」
「自分のことは心配しないで、早く行け」
「愛してる!愛してる!」
「ぜったいに幸せになれ!」

人間は薄汚いものだと常日頃思っているが、ウソでも映画でこういう美しい人間性を見ると、心がほっとする。

もう自分はダメだと思う時、自分のことよりもおまえを助けたい。おまえに生きていてもらいたいと必死で叫ぶ姿。無事であってくれと祈る姿。親、恋人、兄弟、子供という違いはあれど、必死で相手のことだけを考えて走る瞬間が人間にはあるのだと思う。

ヨニ(ハ・ジウォン)が洪水に流されるマンシク(ソル・ギョング)の手を必死で握り、

「しっかり握って」
「手を放したら許さない」
「何を言うの、わたしと結婚しないつもり?」
「プロポーズはうそだったの?」
「とにかく生きて、生きなきゃ結婚もできないわ」

と泣き叫ぶシーン。


また、フィが娘をホテルの部屋から助け出し、娘を元妻と二人してヘリコプターに乗せて見送るシーン。その時はじめて一番言いたかったことを娘に叫ぶ。

「わたしが、ジミンの父親だ。父親だ!」

もう二度と会えなくなるかもしれないわが子に向かって。泣き叫ぶジミン

娘よ、強く生きてくれ

ライフガードのヒョンシクがヘリコプターでヒミと軟派な男を救助する際、ワイヤーが切れそうになったことから、命綱を切って自分だけ海に落とすシーン。その後、海に浮かぶヒョンシクの笑顔は大波に消えていく。


津波が起こってからの、この映画のド迫力はCGだけではなく、非日常をまともに食らった「人間の底力」にある。そもそもそれがなければCGは生かされない。慌てふためく小さな人間どもが精一杯あがきながらもがきながら、相手を思いやって生きようとする姿に感動する。

人間は幾多の震災を経験し、そのたびにこういう人間ドラマをのりこえてきたのか。神戸大震災や東北大震災、亡くなられる寸前まで家族のことを思いやって逝った方々、お互いを励まし合って夜を過ごされた被災者の方々と重なってしまう。

ひと昔前の映画ですが、ぜひまた観てあげてください。
人間の底力=愛があります。

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毒女 悦子

韓国映画をみてハッと胸をわしづかみにされたことありませんか?
悲しい時つらい時に韓国映画を見て、心がほんのすこし救われたことありませんか? しあわせを感じたことありませんか?

わたしはたくさんあります。

韓国映画のもつ奥深さになぐさめられたり、息もできない胸苦しさを覚えたり、一日中その余韻に浸ったり、夢の中まで追いかけられたり。 韓国映画に流れるあたたかいもの、残忍なもの、切ない永遠のものに、 ずっとずっと恋をしています。

同じ気持ちの人たちとつながっていたい。

アラフィフ。老後が心配。
でも死ぬまで韓国映画を抱きしめているぞ。

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