メロー ラブロマンス

男男女の三角関係はむずかしい!「キッチン ~3人のレシピ」(2009)

2019-10-13

新婚なのに夫以外の情熱的な男性との同居がはじまった。冷静でいられるわけがないっしょ!

作品情報

●評価 2.5★★☆
●制作 2009年
●上映時間 102分
●原題 키친
●監督 ホン・ジヨン
●脚本 ホン・ジヨン
●出演
シン・ミナ、キム・テウ、チュ・ジフン、チョン・ヘジン他

あらすじ

モレシン・ミナ)とサンインキム・テウ)は共働きの新婚夫婦だ。サンインは証券マンだが、いつか料理人として店をもつ夢をもっている。モレは日傘専門のお店のオーナーだ。

ある日、モレは楽しみにしていた陶器展に行く。しかしその日は休館日であり、入場を断られる。あきらめきれないモレ。地下に回り、空いているドアから会場にこっそり侵入する。

夢中になって展示物を見ていた時、階段の踊り場でだれかにぶつかって転倒する。トゥレチュ・ジフン)が立って、不思議そうにモレを見おろしていた。見上げるモレ。

誰か近づく物音がして、二人はとっさに展示物の裏に隠れる。係員が展示物の配置換えをしている間、二人は狭い舞台裏で物音を立てないように身を隠している。手と手が触れ、頬が触れるほど接近したその時、モレの意識は次第に薄れてゆき、やわらかな流れに身を任すようになる。長くて深いキスを交わす二人。数分前に知り合った男性とこんな関係になることはモレにはなかったことだ。

夕食時、サンインはモレに会社を辞めたことを報告する。彼が料理人になりたかったことを知っていたモレは笑顔でこれからも支えていくことを伝える。サンインは妻が協力的なことに機嫌を良くする。今後は、フランスから一流のシェフを招いて本格的に料理の修行をし、試食会を重ねてお店を出す計画を打ち明けた。その一流のシェフは韓国人であり、しばらく我が家に寝泊りするという。

モレは今なら話せると思い、陶器展での出来事を正直にサンインに話す。サンインは驚きを隠せなかった。自分だけを見つめてきたモレが、知り合ったばかりの他の男とキスを重ねてきたことが信じられなかった。正直に話したことで許してほしいと懇願するモレ。サンインは許すが、もうその話には二度と触れてほしくないと告げる。

食後、サンインは自分の師匠となるシェフと待ち合わせる。
モレはシェフの顔を一目見た瞬間、うつむいた。シェフこそはトゥレ本人だったのだ。夜、床につく夫に、トゥレとのことを話そうとするモレだが、サンインにその話はよそうと拒まれ、はっきりと伝えることができなかった。一方、あの日モレに一目ぼれしたトゥレは彼女と一緒に暮らせることで胸を高鳴らせていた。

一つ屋根の下に、夫と夫以外の男性と3人の共同生活がはじまった。トゥレのことを夫が知ったらどうなるのか。夫以外の男性にときめいた自分を認めたくなかったモレは、揺れ動く自分の心に不安を感じていた。



※この先はネタバレが含まれます。未だ御覧になってない方は読まないことをお勧めします。


新妻アン・モレ役はむずかしい! シン・ミナよくがんばった!

正直言って、だれがこんな難しい役をやるのだろうと思った。
シン・ミナさんは台本を読んだ時、断ろうとしなかったのだろうか?

それぐらい、わたしにはこの映画は難解でした。

一つ間違えば、このモレ役はひどい嫌悪感の嵐を呼ぶ。
優しい夫、おとぎ話のようなお庭におシャレな家、なに不自由ない生活の中、情熱的でかっこいいチュ・ジフン似の男性と展覧会でばったりと会った瞬間に恋に落ち、激しいキスまでした新妻に、世間のおばちゃん主婦からは嫉妬と妬みの嵐がわき起こる。

「あの女なによっ!」「旦那がいるのに、なんで他に男つくるのよ。浮気できるのよ?!」と退屈な毎日にふつふつしていたおばちゃん主婦たちは、煮えたぎる憎悪をかわいいモレにぶつける。あんただけ何いい思いをしてるのよ!? まさに女の敵になる寸前だ。

わたしとて同じだ。この女がふらふら浮気心をもたなかったら、家庭は安泰だったのに。いくらモレが天然だからといっても、なんでこんなことも分からないのだろうと不思議だった。

前髪ぱっつんが異常にかわいかった新婚モレ(シン・ミナ)

そう。頭にくる。しかし、なぜかモレに寄り添いたいとも思う。

それもこれも、ひとえにシン・ミナが可愛いからだ。その意味でモレの役作りとしては成功している。この前髪ぱっつんのおかっぱ頭。化粧っ気のない透明な素肌感。朝起きてすぐチューしてと旦那にせがむ愛らしさ。すべてが少女のようでかわいい。

映画の序盤では、この可愛らしいモレが、昼間から他の男性とあんな大胆なことをするなんて想像もできなかった。小さな村で育ち、幼い時からサンインのことしか見ていなかったから免疫がなかったのだろうか。サンインとはまったく別の情熱的で自分の気持ちをぶつけてくるトゥレにだんだん惹かれていくモレが、ある意味憐れに思えてくる。風邪をひいたことのない子供がはじめて風邪に感染して真っ赤に顔を膨らませて苦しんでいる。そんな感じだからだ。


サンインになぜ陶器展の出来事を告白したのかといぶかしがる声もあるが、わたしはそれこそがモレを表していると思った。モレはこの世の狡猾な主婦どもとは違う。旦那以外の男性にドキドキしたことを何よりも打ち明けたかったのは旦那のサンインであり、サンインなら分かってくれるだろうと思ったのだ。そこが度天然世界一のモレの良さであり罪である。彼女は精神的に幼すぎるのだ。知恵遅れの少女のように。

その幼さが周りを不幸にしていくことに気が付かない。
トゥレも同じだ。二人はよく似ている。笑いながら火の粉をまき散らす花火のような二人だ。惹かれ合うと燃え上がることしか知らない。

ホン・ジヨン監督が表現したかったものは何なのか。揺れ動く女心か、成長する姿か。よくわからん。

なぜ「キッチン」とタイトルをつけたのか、未だによくわからない。

それほどキッチンがこの映画の中で重要な舞台となっているとは思えないからだ。サンインが料理人になりたかったこと。トゥレが一流シェフであること。たしかに料理がからんではいるが、重要なことはキッチン以外のところで起こっている。

サンインは野球、モレは日傘屋とそれぞれの場所をもっていて、キッチンが主人公たちの原点回帰のような意味で使われたシーンは一度もない。

モレの至らない行動で家庭は修羅場と化す

終盤、モレが男2人の仲直りのためにスープを作っているが、モレが特別にキッチンに愛情をかけた姿は一度もなかった。サンインの料理修行も中途半端だ。血のにじむような訓練もなければ上達も感じられなかった。

それは、日傘、使いきりカメラ、トゥレのお腹の手術痕などにも言える。この映画は、そこらにお洒落な意味ありげワードを散りばめるが、まったくそれらは後になって生きてくることはなく、不発弾として地中に放置される。すべてが中途半端なのだ。

このワードたちは、おしゃれでポップなイメージ作りのためだけに使われたものだろう。だとしたら構成が短絡で安っぽい。うわっ滑りなのだ。観客がつまらないとあくびをするのは、だしの入っていない味噌汁をのまされたと同じだからである(あたしってひどい?)

題材としては、好きではないが、まぁいいとしよう。
つまり、男2人に求愛されて戸惑う新妻モレ。旦那を愛してはいるが、同時に稲妻のように恋に落ちてしまったトゥレとも離れがたい。どちらとも一緒にいたいのだ。しかしだんだんと自制が効かなくなり、ブラックホールに落ちていこうとしている。自分はどうしたらいいのかと悩む女心。そんな折に妊娠がわかる。


ホン・ジヨン監督は揺れ動く女性の心理描写をしたかったのだろう。
シン・ミナさんはこのむずかしい役をほんとうによく頑張って演じていたと思うのだが、いかんせんモレが狂おしいほど悩む姿が描かれてないことから、観客はモレに肩入れして見ることができない。つまりはただの尻軽女として嫌悪感がわいてしまうのである。

ここは非常に残念なところだった。作品は愛されてなんぼなのだ。

ちなみに、モレが既婚者だと分かっていてもひるまないトゥレを演じたチュ・ジフンだが、「アンティーク」のジニョク役とはうってかわった軟派なイメージにジフンファンは面食らったのではないだろうか。トゥレは、最後、飛行機の中で体育座りのまま子供のように泣きじゃくっていたが、彼も愛してはいけない人を愛してしまったという苦悩やもがきがさほど描かれていなく、ただの雄の発情期の暴走のように見えた。

人間が美しいなと思うのは、苦悩や渇望を抱きながらそれを耐え忍ぶ姿や活路を見つけて歩き出す姿なのに。監督、お洒落映画を目指すのはいいが、心の描写が少なすぎて3人の心の葛藤が(とくにモレとトゥレの)伝わらず、観客の共感を得られず終わっている。

旦那との別れ、トゥレとの別れを経て少し成長したモレ

わたしがモレっていいなと感じたのは(生来のかわいさは置いておいて)、妊娠が分かって離婚した後、元夫サンインと海辺で会話しているシーンである。髪を後ろに結び、少し大人になったように見えるモレ。失ったものの大きさをかみしめているのか。

自分が恋をすることで夫を苦しめ、思い描いていた家庭像を壊してしまった。失ったものは戻らないけれど、将来は変えることができる。

サンインに「もう一度おまえを取り戻したいと思う」と言われるが、モレは「もう少し考えるわ」と微笑みながら返した。もしも、ここで二つ返事で「はい。ダーリン!」なんて返事したら、わたしはモレと監督に殺意を抱くかもしれなかった。チープすぎる。

「時間を返せ」と。


人間は過ちを犯す動物である。
トゥレが去り、二人がもう一度やりなおす余韻を残してこの映画は終わるが、人はこうして過ちを犯し、そして許されながら成長していく。今度こそはもっといい家庭を作っていけるかもしれない。信頼関係を大切にしながら。いくら天然希少動物モレと言えども。

がんばれ、モレ。
あんたアホやから、あたしあんたを応援してる。

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毒女 悦子

韓国映画をみてハッと胸をわしづかみにされたことありませんか?
悲しい時つらい時に韓国映画を見て、心がほんのすこし救われたことありませんか? しあわせを感じたことありませんか?

わたしはたくさんあります。

韓国映画のもつ奥深さになぐさめられたり、息もできない胸苦しさを覚えたり、一日中その余韻に浸ったり、夢の中まで追いかけられたり。 韓国映画に流れるあたたかいもの、残忍なもの、切ない永遠のものに、 ずっとずっと恋をしています。

同じ気持ちの人たちとつながっていたい。

アラフィフ。老後が心配。
でも死ぬまで韓国映画を抱きしめているぞ。

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