時代劇

ソン・イェジン主演「ラスト・プリンセス」 大韓帝国最後の皇女 (2016)

2019-08-17

李徳恵の人生はこれほどまでに反日だったのか。疑問が残る作品。

●評価 3.0★★★
●原題 덕혜옹주
●制作 2016年
●上映時間 127分
●監督 ホ・ジノ
●出演 
ソン・イエジン、パク・ヘイル、ユン・ジェムン、ラ・ミラン、キム・ジェウク、戸田菜穂、コ・ス他


圧巻の演技、ソン・イエジン。

まず、映画の出来としては、ほんとうにすばらしかったと思います。

ソン・イエジンの鬼神のような演技と李徳恵本人(徳恵翁主)の壮絶な人生がこの映画の醍醐味でした。

ソン・イエジンはこういう精神が兆したギリギリの役をやると、
ほんとーに水を得た魚のように鋭く、美しく、観ているこちら側が悶絶しそーになるほどの、高嶺の極みにのぼる。

かわいいお姫様のようなお顔立ちをしているから、若い頃から良家のお嬢様といった役柄が多かったけれども、経年、成長されてこういう役柄をぐっと自分のものにできるようになっているのが感慨深かった。

2016年製作当時は、35才になられてましたか。
月日が経つのは早い。

触れると切られそうな演技の連続。泣き、叫び、狂い、恋慕う。
この作品は見る前からゾクゾクわくわくしていました。

わたしは彼女でなかったら、この映画はありえなかったと思う。
ソン・イエジン。ほんとうにすばらしかった。

徳恵翁主を主人公とするこの映画はフィクションの部分が多くあるのだけれど、
ホ・ジノ監督が言われたように、祖国独立の英雄でなくても、頭を低くして混乱の時代を必死に生きぬいた李徳恵(トッキェオンジュ)の生き方にはドラマがあり、人の胸を締めつける何かがあった。

残念。反日デフォルメ化した部分が多すぎた

ただ、作品はやはり反日デフォルメ化された部分が多かったのには、だいぶ残念な気持ちがわく。
この映画は、李徳恵の歴史の半分の事実にも則していないように思う。

①彼女は独立運動にもかかわって来なかったし、②大東重工業の朝鮮人労働者の前で演説したことも勿論なく(ゆえに、指を切断された子供たちが常態化していたという部分もありえない)、③(母親の)梁貴人が亡くなられた際は帰国して葬儀にも参列している。昭和天皇がこれを妨害したという修正はいささか度が過ぎている。④また娘をつれて出国しようとして出国拒否される場面もフィクション。

とにかく、観ていて胸が悪くほどの反日デフォルメがこれでもかとつづく。

歴史上の人物をこれほどまでにデフォルメ化してドラマ性をもたすのは韓国人の性(さが)なのだろうが、李徳恵自身は反日でもなんでもなかったのに、ここまで反日のレッテルを彼女に貼るということを後人がやってもいいのだろうか。はて、韓国人は胸が痛まないのか。

ホ・ジノ監督、なぜここまでの反日デフォルメに走ったのか
映画人としてなぜ? 売れればそれでいいのか?

たしかに、映画が始まる前にテロップで「フィクションで史実とは異なる部分があります」とはあるが、観ている者は信じてしまうではないか。ほんとうに悲しかった。

わたしは李徳恵が実在しない架空の人物であったら、この映画をどれだけ楽しめただろうと思った。また、「この映画に出演できて誇りに思う」と、出演した役者たちはみな口に出して言っていたが、そのことも悲しかった。日本人としてではなく、映画を楽しむ親韓派の一個人として思うのだ。

映画という文化においてまで、こんな情けないことが両国で一体いつまで続くのか。ため息がでる。

李徳恵自身の苦労、悲しみ

李徳恵の簡単な年譜を書くと、

1910年、日韓併合
1912年、誕生。高宗と側室である福寧堂梁貴人との間に生まれる。
1930年、母(梁貴人)死亡。李徳恵、京城に帰って葬儀に参加。
    この頃から統合失調症が現れる。
1931年、対馬藩主宋武志と結婚。夫婦は仲むつまじかったという。
1946年、宋武志の献身的な介護もむなしく、李徳恵の精神病が重くなり入院する。
1955年、李徳恵の実家からの要請もあり、李徳恵宋武志と離婚する。
1962年に朝鮮へ帰るまで、入院生活はつづく。
1989年、76才にて没

これを見ただけでも、李徳恵の人生は波乱に富んでいたことがわかる。
彼女にとっての不幸は、もちろん日本軍による統治のせいで朝鮮で暮らすことができなかったこともあるだろうが、彼女自身が生来的に精神病に悩まされてきた点にあるように思える。

勿論、日本統治による長年の自由束縛によって後天的に病状が悪化したかもしれない点には深く同情せざるを得ない。この点は、彼女でなければ知りえない事実だろう。しかし韓国の反日扇動者は李徳恵の苦労多き人生に便乗して、これを反日に利用するべきではないのだ。

また、映画では、1972年宋武志が韓国に渡った時、李徳恵が彼の面会を拒んだとテロップで流していたが、李徳恵が理性的にこれを断ったとはどうしても思えない。1972年といえば、李徳恵はすでに60才。帰国後、病状も相当すすんでいて、長い間床に臥せっていたという。会わなかったのではなく、会える病状ではなかったのではないだろうか。

以上は、わたしの推測である。

宋武志が前妻李徳恵を想ってたくさんの詩を残したと言われているが、そんな仲睦まじかった夫婦が理性的に壊れるということは考えにくく、病気が二人を裂いたとしか思えないのである。

わたしは、歴史を歪曲して知りたいとは思わない。
それが日本人にとってつらい歴史であろうが、恥辱にまみれていようが、わたしはつつみ隠さず日本の歴史を知りたいと思う。ここでいえば、日本軍が韓国で行ったことについて、または日本国内で韓国人に行ったことについて、客観的に淡々と知りたいと思う人間だ。

よって、明らかに自国礼賛もしくは被害者意識に偏ったデフォルメ歴史映画には日本人・韓国人どちらにも悲しさを覚える。たとえ「フィクションです」と前置きされてもだ。

この映画にはたくさんの日本の場所が出て来るが、撮影場所を調べてみると、日本で撮影された場所は一か所もなく、すべて韓国がロケーションとなっている。つまり、韓国内で撮られた「韓国製日本」なのだ。徹底した反日感を感じた。

あなたは笑うでしょうか?
かなわない夢でしょうが、日韓合作でこういう歴史映画がいつか作れないものかと切なく思う。お互いが協力し合ったしっかりした歴史映画を。

その他気になった点。

1.韓国人を一番苦しめたのは、同胞を裏切る韓国人

朝鮮王皇族の断絶に日本軍が関与したという点に、日本人として見ていて終始心が苦しかったが、結局、韓国人をもっとも苦しめたのは裏で日本軍に加担する同胞たちであったという視点。これも見逃してほしくない。

ヨン・ジェムンさん、すばらしい憎まれ役でした

天皇陛下に直立敬礼する韓国人憲兵の姿を想像するだけで、韓国人は火の玉のように発狂するだろう。ヨン・ジェムンさんは、この超絶嫌われ役を全身で演じてくれました。さいこー!でした。この人の家、文在寅さん革新派に放火されないかと心配するほど。

宋武志を演じたキム・ジェウク

2.映画の宋武志像に大きな違和感あり。

また、宋武志は日本人であるにも関わらず、韓国人のキム・ジェウクさんが演じている。
日本にも留学していた経験があるキム・ジェウクさんの日本語は他の役者に比べものにならないほど流暢だが、彼が宋武志を演じる必要があったのかという点には疑問を感じた。日本軍幹部には日本の俳優を使っているのに、なぜ宋武志という日本人キーパーソンに韓国人の俳優を使うのか(単に日本人を使いたくないのか)。

しかも、新聞記者になったキム・ジャンハンパク・ヘイル)が宋武志の家を訪ねた際に、宋武志に「わたしはもうそんな女(李徳恵)にかかわりたくないんだ」というセリフを言わせた点は、大いなる疑問を感じる。宋武志と李徳恵の二人は、李の精神障害という問題がありながらも夫婦睦まじかったという。そこまで宋武志という夫を日本人という理由だけで冷酷に描く必要があるのか。あまりにも史実に反している点に、悲しい気持ちがした。

キム・ジェウクさんのファンだけに、すこし残念でした。

以上です。

すばらしい役者が勢ぞろいした映画であり、すばらしい演技だったにも関わらず、涙もたくさん流したのに、どこか違和感をたくさん覚えて終わってしまった残念映画でした。

反日だからではなく、デフォルメが効きすぎた歴史観には興ざめしかない。
お互いの国が冷静に歴史を振り返る日が来ることを願う。


なんと!観客動員数、約560万人!
ぎゃっ。

すばらしい役者を使っていながら、映画としては悲しい出来でした
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毒女 悦子

韓国映画をみてハッと胸をわしづかみにされたことありませんか?
悲しい時つらい時に韓国映画を見て、心がほんのすこし救われたことありませんか? しあわせを感じたことありませんか?

わたしはたくさんあります。

韓国映画のもつ奥深さになぐさめられたり、息もできない胸苦しさを覚えたり、一日中その余韻に浸ったり、夢の中まで追いかけられたり。 韓国映画に流れるあたたかいもの、残忍なもの、切ない永遠のものに、 ずっとずっと恋をしています。

同じ気持ちの人たちとつながっていたい。

アラフィフ。老後が心配。
でも死ぬまで韓国映画を抱きしめているぞ。

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