メロー ラブロマンス

往年の韓国の銀幕スター、イ・スンジェ主役「拝啓、愛しています」(2010)

2019-08-26

じじばばだって恋愛する。人間だもの。そっとしておきなさい。

作品情報

●評価5.0★★★★★
●2010年製作
●上映時間 118分
●原題 그대를 사랑합니다(あなたを愛しています)
●監督 チュ・チャンミン
●脚本 チュ・チャンミン、イ・マニ、キム・サンス、キム・ヨンドク
●出演 
イ・スンジェ、ユン・ソジョン、キム・スミス、ソン・ジェホ、ソン・ジヒョ、オ・ダルス

2011 第32回 青龍映画賞/女優助演賞(キム・スミ
2011 第20回 金鶏百花映画祭 主演男優賞(イ・スンジェ

老いることを静かにみつめた映画。そこに答はない

なんだろう。
ものすごく感動している・・・

韓国映画にまたやられちゃったって感じですね。
もう、この涙の余韻をどう表現したらいいのか、いまは言葉が見つからない・・・

だから、韓国ってすごい。
韓国映画が最高に強いのは、まさにこういう生き死にをテーマにした作品

人はどうやって生きていくのか。どうやって老いていくのか。老い人はどうやってそれを受け止めるのか。カメラは美辞麗句を並べず、淡々と二組の老夫婦の毎日を追っていく。

人が老いていく先にはもちろん「死」が厳然とそこにあるのだけど、死ぬ寸前までは人はやはり生きているのであって、自分以外の誰かを思いやったり、励ましたり、抱きしめたり、そういう心のどうしようもない感情から来る行動を止めることはできない。

人が人らしく生きぬいていく姿を、こんなに繊細にあたたかく、「希望」を散りばめて表現する映画をわたしは他に知らない。

「老い」というテーマを扱った場合、そこには直近に「死」という最後しかないのだから、つらいし観たくないという人もいるだろう。わたしも最初あらすじを読んだ時、そう感じて観るのを躊躇した。

老いから連想するものは「痴呆症」「貧困」「長い闘病生活」そんな暗い言葉ばかりだ。きっと重いドキュメントを見るかんじで心が暗くなるのではないだろうか、と。

だが、なぜだろう。結果は観てよかったと心底思う。
深い感動がよこたわる。

この映画は老いるすばらしさや、はつらつと生きていこうだの、そんな夢物語の提示はもちろんないのだが、「死」は避けられないもの、だからそれまでは毎日を自分らしく、正直に、感謝して生きていくしかないじゃないのと、ある種、「悟り」みたいな境地にさせてくれるものがあり、そこには「絶望」がなかった。

「絶望がない」というのは、人生を「やりきった感」があるから成立するものであって、もしも、ここに登場するおじーさんおばーさんカップルたちが一生懸命生きてこなかったなら、そのみじめな老後は「絶望」だらけで、やりきれない気持ちでいっぱいになったかもしれない。

ああ。
わたしも精一杯生きていけば、ぐちゃぐちゃな汚いばーさんになっても、「やりきった感」に支えられて、みじめな老後にはならないんだと思えた。

そう。やりきったなら、あとは「感謝して老いていこう」しかない。

イップンとマンソク。それぞれの人生を振り返る

人間は最後までじたばたして、最後まで誰かを愛していく

おじーさんとおばーさん、それぞれ2カップルの話。
一組は、人生最後の恋におちたおじーさんとおばーさん(ともに独身)。
もう一組は、長い年月ともに寄り添って生きてきた老夫婦。

それぞれのカップルの老いていく過程をあたたかく映し出してくれました。

「老いていく」という言い方がやぼったく聴こえるほど、この映画ではじーさん、ばーさんたちがほとばしるように「生きていて」、すごくすごく「生きていて」、ああ、人間は死ぬ最後の最後の瞬間までこうあるべきなんだなと思った。

つまり、自分の愛する人を「気にかけてしまう」

気にかけてしまうから、思い通りにならないときついことも言ってしまい、後悔したり追いかけたり、涙ぐんだり、一緒に死のうとしたり。もう二度としないと誓ったり、笑って忘れたり。

人間は最後までじたばたして、こうじゃないんだそうじゃないんだと叫びながら、そうして愛していく。そういう動物なのだということを思った。

「老いる」とは、死へひたすら向かって歩くことではなく、毎日を自分の位置で「生きる」こと。それは若者の毎日となんら変わりはない。

痴呆症の妻をおぶって家に連れて帰るクンボン(ソン・ジェホ)

老いることは生きること。愛すること。

韓国映画は、人の息づかいまでも丁寧に描く。

老いも若きもすべての醜さを表現し、愛しさを思う存分描く。
人生最後の最後におとずれた、だれかを思う愛しい愛しい気持ち。
あなたならどうしますか?

涙があふれてあふれて、今も止まらない。
こういう風に、最後の最後までだれかを愛して死ねたらさいこーだなと思わてくれる映画でした。

頑固なマンソクじいちゃん(イ・スンジェ)もイップンばあちゃん(ユン・ソジョン)もグンボンさんソン・ジェホ)も妻(キム・スミ)も、ほんとうにすばらしい。みーんな愛すべきじじばばどもです。

しわくちゃになって生きるんだ。死ぬ寸前まですべてが「愛してる」と「ありがとう」でいっぱいなんだ。そうなんだ。

上手く書けないわ。くそー。
韓国の往年の銀幕スターが渾身の演技で魅せてくれます。
老いた姿を見せることは抵抗がなかったのかと思うほど、すべてをかなぐり捨てて演じてくれました。

どうぞ観てやってください。(2013年記)


キム・スミさんはこの映画で、2011 第32回 青龍映画賞 女優助演賞を受賞されました。痴呆症の妻を演じたキム・スミさんの演技はとくにすばらしかった。鬼の女優魂を感じて圧倒されました。

キム・スミさん

ユン・ソジョンさん、2017年6月16日、ご逝去されました。ご冥福をお祈りします。

ユン・ソジョンさん

愛すべきじじーとばばーどもです

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毒女 悦子

韓国映画をみてハッと胸をわしづかみにされたことありませんか?
悲しい時つらい時に韓国映画を見て、心がほんのすこし救われたことありませんか? しあわせを感じたことありませんか?

わたしはたくさんあります。

韓国映画のもつ奥深さになぐさめられたり、息もできない胸苦しさを覚えたり、一日中その余韻に浸ったり、夢の中まで追いかけられたり。 韓国映画に流れるあたたかいもの、残忍なもの、切ない永遠のものに、 ずっとずっと恋をしています。

同じ気持ちの人たちとつながっていたい。

アラフィフ。老後が心配。
でも死ぬまで韓国映画を抱きしめているぞ。

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