家族

ソン・ジル主演の「マイ・ラスト・ラブ~私に残った愛を」(2017)

2019-10-09

世界一うざい親父は、家族のために土下座だって厭(いと)わない!

作品情報

●評価 3.0★★★
●制作 2017年
●上映時間 111分
●原題 내게 남은 사랑을(わたしに残った愛を)
●監督 チン・グァンギョ
●脚本 チン・グァンギョ、イ・ソンギョン
●出演
 ソン・ジル、チョン・ミソン、クォン・ソヒョン(元4Minute)、ホンソク (PENTAGON)、イ・イェウォン③

あらすじ

キム・ボンヨンソン・ジル)は建設現場の所長だ。毎晩会社の接待に駆り出されては帰宅が遅くなり、妻のファヨン(チョン・ミソン)に呆れられている。双子のウジュ(長男)とダルニム(長女)は高校生。二人とも思春期で反抗期まっ只中。年の離れたビョルニムイ・イェウォン③)だけがボンヨンの味方だ。
ボンヨンは、毎晩上司と酒を飲むのも、夜遅くまで働くのもすべては家族のためにやっていると思っている。サラリーマンの宿命であり、普通の家族の風景だと。

ある日、ボンヨンは体に不調を感じる。そういえばこの数か月、腹痛がつづいていた。我慢ができなくなったボンヨンは病院に行って検査をする。末期の大腸癌だと告知される。自分がなぜ? これだけ家族のために頑張ってきたのに? 自分が死んだら家族はどうなるんだ? 突然の宣告に納得ができないボンヨンは病院で錯乱状態になる。

家族に話すべきか。ボンヨンはどうしたらいいか分からず、会社に出勤する生活を続ける。イライラが高じて家族に当たり散らすボンヨン。家族もボンヨンに反発する。腹痛は少しずつひどくなる。死を間近に感じたボンヨンは、ふと、自分が築いてきた家庭を振り返った。相手を気遣わず不平不満ばかりを言い合っている。一つ屋根の下に暮らすのに心はバラバラだ。

ボンヨンはなにより自分が変わろうと決心する。自分が亡くなった後も家族が一つになって助け合って生きていけるように。それが自分が残せる家族への愛だから。


※以下はネタバレを含みます。未だ観ていない方は読まないことをお勧めします。


これという大切なシーンで、韓国の女性は奥さんも恋人もめちゃくちゃ気が強い

この映画、ベタなお涙ちょーだいの家族物語なのだけれど、直球勝負には弱いわたしは素直に号泣した。

とてもいい映画でした。

ソン・ジルさんって、ださくてカッコ悪くて、うっざい親父を演じさせせたら右に出る者はいない! お腹ぼよんぼよんで、頭はぼさぼさの、ださかわいいブルドック顔がますます愛しくなりました。

髪の毛大爆発のボンヨン(ソン・ジル)

映画の見所は、ボンヨンソ・ジル)が大腸癌宣告を受けてから彼がどう生きるか。家族がそれをどう受け止めるか。どんなふうに監督は表現するんだろうとドキドキして見ていた。

わたしは韓国映画を見る時、楽しみにしているのは「韓国人はこういう時にどういうリアクションをするのだろう?」という点。同じモンゴロイドの血をひくが日本と韓国は似て非なり。文化の差を感じる瞬間はとくに死生観にあるように思う。そこがおもしろい。

この映画で、わたしが驚いたのは、夫が末期癌であることを知った妻ファヨンが帰宅して夫ボンヨン「わたしはあなたの何なの!?」と、どうして自分に話してくれなかったのかを責めるところである(結構きつい口調で)。

彼女はおまけにバンバンと病気のボンヨンの背中まで叩く。結構な音が鳴ったので病身のボンヨンは痛かったはずだ。結核患者ならその場で昇天したかもしれない。

日本人ならこういう時、きつく責めることはしないだろう。

「あなた癌だったの? どうして言ってくれなかったの?(あくまでも優しく言う)」までは言ったとしても、相手が自分を思いやって言わなかったのだろうと察する。そして、相手の優しさに胸が一杯になりながら、「ごめんねつらい思いをさせて。でももう我慢しなくていいからね」とただただいたわるだろう。


気づいてあげられなかった自分が悪かったと自分を責める。相手は病人だ。陶器を触るかのように、そっと抱きしめるだろう。間違ってもバンバン叩かない。

精神的にずいぶん傷ついてもいる。そんな夫を目の前にして、「あたしを何だと思ってるのよ! あたしはあんたの妻なのよ! あたしに何で言わないのよ!(のような響き)」と、まず自分の気持ちを爆発させる韓国人妻があまりにもおもしろすぎて、文化の差異に圧倒されるのが毎回楽しい。

映画だからきっと誇張しているのよと言われる方がいるかもしれないが、わたしは映画やドラマを通して文化論は大いに語られるべきだと思っているので、お互い隅々まで観察して楽しむべきだと思っている。茶化すのではなく「楽しむ」のだ。「是非」ではなく、それは単なる「違い」なのだということを忘れてはならない。

わたしは韓国人が、まず自分の感情を爆発させて、相手に自分はこう思っているんだと知らせる習慣が悪いことだとは思わない。自分のカードをさらけ出すことで相手と早く分かり合えるからだ。愚直で率直なのだ。日本人のように遠慮して相手を気遣いすぎると伝わらないこともある。「美」の捉え方の違い。まさに文化の違いだ。

ファヨンに見るように、こういう場合、韓国の女性は男性よりだんぜん精神力が強いように思う。それは、怒鳴り散らす大砲だ。相手にスキを与えず怒鳴り散らして、相手がひるんだ時に飛びついて強く抱きしめる。相手の気持ちなんて構わない。自分の気持ちを理性もなく爆発させるのは、映画やドラマを見るかぎりでは韓国の女性に多い。

男性主導ではなく、韓国はまちがいなく女性が強いのだ。だから儒教を用いて、猛犬女性を縛ろうとしたのだろう。男の考えることは浅はかこの上ない。

韓国の映画で男がめそめそ泣き、女がばかやろうと抱きしめる。
なんて楽しい韓国なのだと思う。わたしは韓国を誇りに思う。
ぶはははは。

あがくだけあがいた人間の強さが表現されている

なんで死ななきゃいけないんだとあがいた人間の姿と、死んでいく瞬間まで生きてやるとあがいた人間の姿が、とても率直に描かれていた。

ボンヨンは、飲みたくない酒を飲んで上司のご機嫌をとり、その息子の保育園の送り迎えまでする。責任をとれと言われたら土下座をして謝り、家族を守るためならなりふり構わず生きてきた。娘や息子には煙たがられ、遅く帰って来てもお帰りも言われず、妻からベッドも追い出される。それでも自分が家族を支えているのだという自負があった。

人はこれを無様(ぶざま)と呼ぶかもしれないが、ボンヨンの生き方は親父としてカッコよかったと思う。

高いお金を出して塾にも通わせてあげているのに、勉強ひとつしない双子の息子と娘。音楽と漫画。そんなものに夢中になってどうするんだ!と苛立ちを隠さず感情をぶつけるボンヨン

近所の写真屋にこっそり自分の遺影を撮影しに行くボンヨン。自分はあといくらも生きられないかもしれないのに、愛する家族が思うようにならない。娘は娘で一人部屋をもらえない不満を抱えて外に自分の世界を求める。浮気をしていると誤解して父親に嫌悪感を抱く息子。カメラの前で笑顔がつくれず男泣きに泣くボンヨン。この場面はまったく号泣する。

感情的にならず、冷静になって話し合えばすむものが、ちゃんと向き合うことを避けてきたがために家族は一つになる機会を見つけることができなかった。自分たちを支えてくれた親父があとわずかしか生きられないことを知るまでは。

ボンヨンが自分の天命を受け入れ、家族になにを残すことができるだろうと考えた時から、家族は少しずつ一つになっていく。お互いが出来るだけのことを出来るだけしてあげようと考えるようになったからだ。

娘が愛する音楽活動を認め、息子と酒を交わす。
がんばれよ!おまえら最高だ!とほめてあげるボンヨン
父の偉大さを、今更ながらかみしめる子供たち。

映画は、ボンヨンが亡くなるシーンは一切見せずに、彼が亡くなった後の家族団らんを映していく。「お父さんに会いたいよ」と泣く末娘のビョルニム。自分の隣りに親父がそっと寄り添ってくれているのにも気づかずに。にが笑いするボンヨン

ボンヨン、あなたが必死で守りぬいた家族がそこに集い、支え合って生きてるよ。あなたが残したものはすごいよ! わたしは声にならない声を出して泣いた。

ソン・ジルの世界一うざださい親父に拍手喝采!
すばらしい映画でした。

エンディング、RUNY(ロニー)の「心が届くように」 が心にしみわたる

最後に流れるRUNY(ロニー)の「心が届くように」は「マイ・ラスト・ラブ」の日本公開のためにわざわざ作詞作曲されたエンディングソングだ。ここぞという時に流れて、観客は心をもっていかれる。

RUNY 「心が届くように」


PENTAGONのヴォーカル、ホンソクと元4minuteのクォン・ソヒョン、とてもよかったですよ。役者としても今後が楽しみです。がんばってほしい。

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毒女 悦子

韓国映画をみてハッと胸をわしづかみにされたことありませんか?
悲しい時つらい時に韓国映画を見て、心がほんのすこし救われたことありませんか? しあわせを感じたことありませんか?

わたしはたくさんあります。

韓国映画のもつ奥深さになぐさめられたり、息もできない胸苦しさを覚えたり、一日中その余韻に浸ったり、夢の中まで追いかけられたり。 韓国映画に流れるあたたかいもの、残忍なもの、切ない永遠のものに、 ずっとずっと恋をしています。

同じ気持ちの人たちとつながっていたい。

アラフィフ。老後が心配。
でも死ぬまで韓国映画を抱きしめているぞ。

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