ドキュメンタリー

「将軍様、あなたのために映画を撮ります」 (2016) [イギリス映画]

2019-08-21

たかが映画のために拉致さえいとわない。子供のように喜んだ金正日。

作品情報

●評価 3.0★★★
●制作 2016年
●上映時間 97分
●原題 The Lovers and the Despot
●監督 ロス・アダム、ロバート・カンナン
●出演 チェ・ウニ、シン・サンオク


どうしても二人を拉致して自分の思う映画を作らせたかった金正日


韓国映画ではないのですが、感想を書きたい。
北朝鮮のことを扱った映画で、製作国はイギリス。

1978年に起こった韓国の国民的女優チェ・ウニと映画監督シン・サンオクの北朝鮮拉致事件を追ったドキュメンタリー。

まず、「将軍様、あなたのために映画を撮ります」って名タイトルだと思った。英語タイトルの The lovers and the despot だと日本人からは、は???みたいな感じだが、「将軍様、」と来ただけで、日本人はまずもって超やばいあの国を全身で感じることができる。この邦画タイトルを付けた方、心から尊敬するぞ。

感想としては、神秘のベールに包まれた北朝鮮の姿がすこしだけ知ることができて、とてもおもしろかった。北朝鮮のことに触れるだけでもイヤという日本人も、この映画は反日を扱ったものではないので、素直に見れると思う。

現在は、金正恩が北朝鮮のトップだが、この拉致事件が起きた時は、父親の金正日がトップの時代で、専制君主とひとにぎりの権力階級がその他大勢の富を占領していて、しかも滅多にメディアに出てこない。私たち世代には北朝鮮という国が厚いベールにしっとり包まれていて、それはそれは今よりももっともっと謎めいた国として映っていた。

ザ・人間金正日の断片が飛び出してくる。

この映画では、ザ・人間・金正日の断片が次々と飛び出してくる。

韓国の映画監督(シン・サンオク)と往年の大女優(チェ・ウニ)をわざわざ拉致してきて、北朝鮮で映画を作らせるほどの、映画狂いの金正日

いくら映画への情熱があろうとも、拉致をしてまでやることかと思うのだが、それを罪の意識もなくさらりとやってのける金正日にゾッとする怖さを感じた。


韓国では資金難から作りたくても作れなかった映画を、拉致されたがゆえ(北朝鮮では)最高級の機材や撮影所をそろえてもらい、何本も撮れたほくほく顔のシン・サンオク監督。

もちろん自分の撮りたいものと金正日の撮りたいものの違いはあれど、生きていくためには、自分の心を叱咤叱咤叱咤、and ちょい鼓舞して将軍様が喜ぶものをせっせと作りつづけた(83年から86年までで計17本もだ)。

彼は北朝鮮では押しも押されぬ名監督となり、名声も得たが、それでも内心は脱北して韓国に帰りたかった。

一方、シン監督と離婚したとはいえ、元妻で大女優のチェ・ウニは、すっかり洗脳されたふりをしながら、必死に北朝鮮で女優として活きていこうとする。

最初に、元妻チェ・ウニが香港で拉致され、それを心配して香港に向かったシン監督が、香港で工作員にだまされ拉致されてしまう。こうなったら北朝鮮という監視の国で二人で力を合わせて生きていくしかない。

自分がこんな状況に置かれたらどうしただろう?
この二人のように強くなれただろうか?
ぞっとした。

生きるために人形になった二人

北朝鮮で再会した二人は数奇な運命をたどることになるのだが、その二人が金正日の肉声を録音テープに残しつづけていたのが、ほんとうにすごいと驚く。

いずれ韓国に帰った時のことを考えて、証拠を残そうとしていたというが、
見つかった時のことを考えると、わたしでも震える。当然、即処刑は免れなかっただろう。にも拘わらず、二人は金正日の肉声をカセットテープに録音しつづけた。そこには金正日が無邪気に語る映画愛があった。

ここらへんの二人の勇気と緊張感は、映画を観ていて半端ないものが伝わってくる。手に汗にぎるとはこのこと。ほんとうにすごい国家級の証拠資料だ。

映画が何よりも好きだった金正日は、結局二人のことを信頼しすぎてしまい、こういう失態を犯してしまうのだが、反対に、人間・金正日が垣間見える場面でもあった。なによりも映画が好きだった将軍様のフリーク度がここにひしひしと伝わる。映画に関してもサイコ野郎だ。

二人は脱北を心に決め、心を一つにして互いを励まし合い、助け合う。
この場面はとても感動するものがあった。何日も何ヶ月も何年も脱北のチャンスをうかがい、もちろん部屋にいても盗聴されているので、脱北にかんする会話をうかつにすることはできず、小声でしたり筆談でしたり。ただひたすら慎重に事を運ぶのだ。

最後、チェ・ウニが拉致されてから8年後(1986年3月)、二人はウィーン滞在中に機を見てアメリカ大使館に駆け込み、脱北を成功させる。

記者会見でチェ・ウニは、涙目でため息をつきながら、拉致されている間「生きるために人形になった」とその苦労を吐露している。ほんとうに脱北できてよかった。

一方の、シン監督。苦労してようやく韓国に戻れたのに、その後は韓国の映画業界に冷遇されつづけたという。拉致される前、韓国の映画業界を激しく批判していたことから、自分から進んで脱北したのではないのか(極左ではないのか)という噂は最後まで消えることはなかった。少し気の毒に思えた。
オイ、モスコシ ヤサシクシタレヨ。

いやあ…すごいドキュメントでした。
こんな拉致ごっこを繰り返す国ってなんて国なんでしょう。
哀れというか、悲しいというか。

北朝鮮って…不思議でひどくて、結局、ひどい!

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毒女 悦子

韓国映画をみてハッと胸をわしづかみにされたことありませんか?
悲しい時つらい時に韓国映画を見て、心がほんのすこし救われたことありませんか? しあわせを感じたことありませんか?

わたしはたくさんあります。

韓国映画のもつ奥深さになぐさめられたり、息もできない胸苦しさを覚えたり、一日中その余韻に浸ったり、夢の中まで追いかけられたり。 韓国映画に流れるあたたかいもの、残忍なもの、切ない永遠のものに、 ずっとずっと恋をしています。

同じ気持ちの人たちとつながっていたい。

アラフィフ。老後が心配。
でも死ぬまで韓国映画を抱きしめているぞ。

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