別れがあるから、わたしたちは永遠に出会っていく

作品情報
●評価 5.0★★★★★
●制作 2005年
●上映時間 108分
●原題 세드무비(サッドムービー)
●英語題 Sad Movie
●監督 クォン・ジョングァン
●脚本 ファン・ソング、クォン・ジョングァン
●出演
チョン・ウソン、チャ・テヒョン、イム・スジョン、ヨム・ジョンア、シン・ミナ、イ・ギウ、ソン・テヨン、ヨ・ジング
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別れはさよならではなく、永遠の命にある階段の踊り場に過ぎない~
よかった…
涙が枯れるほど泣いて泣いて泣いて、泣いた。
8年前に観て、今夜再鑑賞した。
あの時の感動のまま、何度も泣けた。感謝したい。
4つのオムニバスが登場するが、それぞれに共通するテーマは「別れ」と思いがち。恋人、親子、片思いとさまざまな人間関係の悲恋や別れを描いてるようにみえるのだけれど、じつはそうではないように思えた。
わたしには、「生きる」がテーマに思えた。
別に「生きる」といってもそんな大げさなものではなく、毎日の生活のような当たり前の風景そのもの。朝になったら朝食を食べ、夜になったら寝床につくというなんの変哲もない風景の積み重ね。
大切な人と生活したり、喧嘩したり、別れたりを繰り返しながら、それがアニバーサリーであってもなくても、人は月日を重ねて日々の暮らしを続けていく。死ぬほどつらくて悲しい別れもいつかは夕立の雨音に消えていく。
人は、愛する人を失ってもうぜったいに立てないと叫んでも、いつかは悲しみを乗り越え、さらに新たな悲しみも乗り越えていく。
わたしにはサッドムービーが、そんなこしゃくでかわいい人間が日々をけなげに「生きる」姿にエールを送った作品であるように思えてならない。
別れは、生活のひとつの風景であり特別なことではない。朝になれば起きて服を着替えるように、人はまた恋をするのだから。
一昔前のフランス映画のような軽いBGMが全体に流れていて、作品を重苦しいものにしなかった。
小さな人間が愛しいと思えた。
すばらしかった。
韓国人は、アジアの中で唯一ラテン系の感情爆発の民族というイメージがあるのだが、なぜこうも琴線に触れるようなすばらしい作品を次々と生み出すことができるのか。
なぜこうも、生と死、別れと愛を言葉少ないまま語れるのか。
その落差に驚き、恐ろしいとさえ思う。
音の向こう側、動きの向こう側、心の奥底の無を語るのは日本人の得意とするところではなかったか。韓国映画が日本人の心を打つのは、共通する感性に訴えることに着実に成長してきたからではないか。
ぜひ、観てください。
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