スリルとサスペンス

必ず我が子を取り戻す!キム・ユンジン主演「セブンデイズ」(2007)

2019-10-18

キム・ユンジンが娘を求めて走り回る!最初から最後まで緊迫の連続でアドレナリンたれ流し映画とはこれだ!

作品情報

●評価 5.0★★★★★
●2007年製作
●上映時間125分
●原題 세븐 데이즈(セブンデイズ)
●監督 ウォン・シニョン
●脚本 ユン・ジェグ
●撮影監督 チェ・ヨンファン
●出演
キム・ユンジン、キム・ミスク、パク・ヒスン、チャン・ハンソン、チェ・ミョンス、チョン・ドンファン、ヤン・ジヌ、オ・グァンノク、イ・ジョンホン、ウォン・プンヨン、イ・ラヘ、オク・チヨン


あらすじ

ユ・ジヨンキム・ユンジン)は名うての弁護士である。請け負った弁護はほぼ100%の確率で勝訴している。マスメディアはそんなジヨンに注目し、連日彼女の言動が新聞をにぎわす。そんなジヨンには可愛い一人娘ウニョンイ・ラヘ)がいる。シングルマザーの彼女にとっては仕事よりも何よりも大切なのがウニョンである。

運動会の日、親子レースでジヨンが走っている最中にウニョンが誘拐される。ジヨンは警察と連携し、お金を渡す代わりに娘を返してもらおうとするが、犯人はことごとくジヨンと警察の動きを察知し、その度に娘の命は危険にさらされた。
ジヨンは警察に頼らず自分の力だけで事件を解決し、娘を奪還することを決意する。犯人の望みはお金ではなかった。犯人はジヨンに娘を返してほしければ、二審を係争中のチョン・チョルチンチェ・ミョンス)なる男の弁護を担当して彼を無罪にすることを要求した。

チョルチンには婦女暴行だけで前科5犯もあり、今回の強姦殺人にたいしては三日後に死刑判決が下ることが予想されていた。残された時間はわずかだ。誰もが反対するが、ジヨンはすぐさま事件の弁護にとりかかる。事務長チャン・ハンソン)と小学校からの友達、ソンヨル刑事パク・ヒスン)が唯一協力してくれた。

強姦殺人の被害者ヘジンの母親ハン・スッキキム・ミスク)はチョルチンが極刑になることを誰よりも望んでいる。やり手のジヨンが弁護士についたことを知り、彼が無罪になるかもしれないことに強い危機感を覚えはじめる。なぜあんな奴の弁護を引き受けるのだ。

娘を殺された母と娘を誘拐された母。娘のためなら悪魔にも魂を売り渡す。二人の母の命をかけた闘いが始まる。はたしてジヨンは娘を取り戻すことができるのか?!



※以下はネタバレがあります。未だ御覧になってない方は読まないことをおすすめします。


ウォン・シニョン監督とキム・ユンジンが最高の化学反応を起こした!

この映画には、100点満点中、99点をつける!
それほどすばらしかった。限りなく100点に近い99点ですね。

わたし、個人的に好きな映画は「子猫をお願い」や「猟奇的な彼女」、「彼女を信じないでください」「私の少女」等の家族・友達・労働者をキーワードにした、地味めの映画が大好きなのですが、今回のこの「セブンデイズ」だけは分野を超えて、大大大満足でした。

見てよかったーーーーー!
おもしろかったーーーーー!って気持ちが心の底から広がる映画。

やはり、ウォン・シニョン監督は天才だ!
作品にぶっとぶくらいのおもしろさがあって、125分があっという間に感じる。なんて幸せな時間をもらったのだろう。

最後のどんでん返しは一体何なんだ???
あれを想像できた人はまずいないのではないのか? ところが振り返ってみると、ああ、だからかなるほど、と膝をポンと叩いてしまう。監督が各所に仕掛けた構図と策略がうわーっと頭に広がってきて、しみじみすごい映画だなぁと思えてくる。

この映画は、もともと、脚本を書いたユン・ジェグ監督キム・ソナが組んで「木曜日の子供」という題名で撮影が開始されたそうだが、意見の相違で撮影が中座したいわば曰く付き(いわくつき)の作品だ(※輝国山人の韓国映画 参照)。

キム・ソナ主演がなくなったことは大変惜しいが、わたしは今回ウォン・シニョン監督キム・ユンジンがタッグを組んだことで見事なケミストリーを生んだことに大満足をしている。他に類がないほど、このコンビは最高だった。

キム・ユンジンさんが前作の中座については何も知らずにジヨン役を引き受け、映画に集中できたことはかえってよかったかもしれない(ユンジンさんは当時、アメリカドラマ "LOST"の出演でアメリカと韓国を行ったり来たりしていた)。

(※結局、この訴訟はキム・ソナさん側が勝訴しているが、訴訟から受けたイメージダウンと人間不信で、彼女はこの後3年ほど本格的な作品に復帰できなかった。気の毒に。)

원신연 감독 ⓒ홍기원 기자 xanadu@

ある意味、ウォン・シニョン監督の個性の強い撮影スタイルは役者をへとへとにさせてしまうものがある。雨の中を叫びながら歩き、大草原を全速力で走らされ、ある時はガラスが上から割れ落ちて来たり、ある時は両手を拘束されたまま水の中に突き落とされる。血まみれ泥まみれなんて序の口だ。

これは監督自身が「鬘(かつら)」で本格的に映画監督デビューする前はスタントマンだったからか。命が危険にさらされる一歩手前、限界線に触れるか触れないかでうろうろする映画づくりが大好きなのだろう。さすが天才はこうでなくちゃ。

彼に選ばれる役者は肉体的にはもちろん、泣いたり笑ったりの激しい演技を秒毎に要求される。展開が早くて人をうならせる映画こそが監督が得意とする分野だからだ。ナイフのように人を深く刺して血まみれになったと思ったら、次の瞬間白衣を着て人工呼吸をしているような感じ。人間の怪奇性・多面性をさらりと演じることを当たり前のように求められる。

それをこなすのは、やはりキム・ユンジンのようにプロ意識が高く、精神的にタフな役者でなければ無理であろう。

当然のことだが、キム・ユンジンはこの映画で、2008 第45回 大鐘賞映画祭、主演女優賞を受賞している。それぐらい「セブンデイズ」のキム・ユンジンは本当にすばらしかった! 

娘を誘拐され、半狂乱になりながらも、7日間を弁護活動に集中して無罪を勝ち取り、娘を取り戻す母親役。半狂乱の母親の涙と怒りがこれでもかと表現されていて、観る者の心を強く打った。彼女が走れば私も走り、泣いて壁を殴りつければ私の拳が痛かった。

彼女は観客に痛みさえ一瞬にして連動させる。魔法使いのような役者である。役者になるために生まれたとはこういう人のことを指すのだ。逆に、これ以上の演技ってあるのだろうか? あるとするなら見てみたい。すでに韓国だけではない。キム・ユンジンは世界の宝だ。

弁護士ジヨンとヘジンの母スッキ。これは二人の母の闘いだ!

なにがすごいって、この映画の監督・脚本はもちろんだが(既前述)、対立する二人の母役を務めたキム・ユンジンキム・ミスクの母親愛がすごかった。

確かに、すべてを知っていたのはヘジンの母親スッキ(キム・ミスク)であり、彼女の練りに練った企みにはめられたのはジヨン(キム・ユンジン)である。だが、母として娘を思う気持ちにおいては二人は同じ土壌に立っており、娘を殺され復讐に燃える母親と、誘拐されて奮い立つ母親という、娘を心から思う強い母親の愛がこの映画の核心を構成し、大河のごとく観客の心をかっさらって行った。

キーワードは「母の愛」。

皮肉なもので、娘を取り戻すためにジヨンはチョンチルの弁護人として彼をなにがなんでも無罪にしなければならなかったため、自分もチョンチルの過去の被害者家族であるとウソをついて母親のスッキに近づいたり、不法侵入をしてヘジン宅を捜索しなおしたり、PCから情報を盗む。

娘を殺されて悲しむ母親スッキの気持ちが痛いほどわかるが故、ジヨンは自分がやっていることがつらくて仕方がなかった。うしろめたさを強く感じながらも、弁護活動をするジヨン。世界のすべてを敵に回してでも、チョンチルを無罪にしなければならないのだ。ジヨンの母親愛が強ければ強いほど、観客はジヨンに味方し、極悪犯チョンチルよ、おまえなんか無罪になってくれと願ってしまう。監督はまさにそれを狙っている。

一方で、ジヨンの娘を誘拐した張本人はまさに母親スッキであり、スッキも娘を思って気が狂いそうなジヨンの気持ちが当然痛いほどわかっていただろう。映画では最後に一気にネタ晴らしをもっていくので、そんなスッキのジヨンにたいする複雑な感情は一秒たりとも表現されなかったが、スッキがジヨンに申し訳ないとは思いつつも、チョンチルを憎む気持ちが強ければ強いほど、観客はまさかスッキが誘拐を企てた悪の張本人などとは予想だにしない。

そうなのです。この二人の「母の愛」こそが最大の共犯であり、愛が強ければ強いほど、無罪をめぐる攻防する二人のベクトルが観客の眼にベールをかけていく。

じつに巧妙だ。
芸術的ともいえる罠に、最後、観客は足首をはさまれ転倒する。地団駄など踏む力などない。ただ腰を抜かしてその場から立ち上がれない。この映画の衝撃度がいかほどか分かるだろう。

「セブンデイズ」を支えた脇役たち--パク・ヒスン、オク・チヨン、その他

1. しびれるほど格好いい役者パク・ヒスン!

その刑事凶暴につきご用心。ソンヨル刑事を演じるパク・ヒスン

本作品で、主役のキム・ユンジンを脇からぐっと支えるのがパク・ヒスンの存在だ。本作品では、ジヨンの小学校からの幼馴染ソンヨル刑事として登場する。

パク・ヒスンに依頼が来るのはほとんどが悪役が多いというが、このソンヨル刑事は、究極的にだらしなく凶暴だが人情にあふれた刑事役であり、人々の記憶に残るすばらしい役柄だ。ただそばにいて、吹き抜けていく風のような役柄ではない。

ソンヨルは、ジヨンがどんな苦境に落ちても彼女を信じ、助けてあげようとする守護神のような存在だ。常にタバコをふかし、服装も振る舞いもチンピラ風。普段は口も行儀も悪く、事件解決のためなら違法行為もやってのける破天荒な直情型刑。ドラ声で怒鳴り散らされる同僚たちは、そんな彼をもてあましている。

警察を信じられなくなったジヨンが一人で娘を奪還しようと苦心する中、ジヨンの行動を不審に思ったソンヨルが彼女を問い詰める。真実を知った時からソンヨルはジヨンが飼う猟犬のように精力的に動き始める。すると、強姦事件の真相が薄皮をはがすように見え始め、同時にウニョンを誘拐した犯人にも肉薄していく。ソンヨルという存在は非常に重要な役柄だ。

ジヨンとソンヨルは性格が正反対であり、事件を洞察する手法も真逆だ。にもかかわらず、この二人がタッグを組むことで凸凹が丸くなっていき、事件突破への大砲として炸裂する演出はさすがウォン・シニョン監督だ。

今後もパク・ヒスンから一瞬たりとも目が離せない。またいつかウォン・シニョン監督とタッグを組む日が来てほしい。

2. 「子猫をお願い」のジヨン(オク・チヨン)が出演。なつかしくてうれしい!

この映画には、名脇役といえば、チャン・ハンソンチェ・ミョンスチョン・ドンファンなど名だたる役者が出ているが、すみません、個人的に「子猫をお願い」が大好きだったので、チョ・チョンチルの妻役で出演したオク・チヨンさんにライトを当てさせてください。

オク・チヨンさんは「子猫をお願い」では、貧しさにあえぐ求職中の若い女性ジヨン役を演じ、それはもうペ・ドゥナさんを食ってしまうほどの演技力でした。2001年第9回、利川春史大賞映画祭 主演女優賞を受賞している。

法廷で。チョルチンの妻ギョンスク役(オク・チヨン)

今回は、強姦殺人の被疑者チョルチンの妻役で出ていますが、チョルチンが警察に連行される場面では黒タンクトップで胸があらわになる服装で、古アパートの廊下で泣き叫ぶという演技を披露。上図は、裁判で夫チョルチンに不利になる爆弾発言をして法廷にいる傍聴人がたまげるというシーン。

夫が逮捕されると生活費に困るから泣き叫び、今度は義母の保険金ほしさに夫を死刑にする証言を平然とする悪魔のような女だ。

どちらも「子猫をお願い」の地味でめたがないジヨンとはまったく正反対の役柄に、最初見た時はまったく分からなかった。キャストを調べてようやくオク・チヨンさんだと分かり、感慨も一入(ひとしお)でした。

どこか淋し気な表情をもつ生来の薄幸性は、今回の役にもぴったり。
オク・チヨンさん、今後も応援していくぞ。

本映画 撮影監督チェ・ヨンファンさん、こんなところに登場してましたか?!

郵便配達人役(チェ・ヨンファン)

偶然見つけたのですが、撮影監督のチェ・ヨンファンさんが郵便配達人役でひっそり登場していました。

「あちこち探し回りましたよ。サインくさだい」

と、ぶつぶついう配達人の顔を、不思議そうな目でちらりと見ながらサインするジヨン(キム・ユンジン)。
この不思議そうに見る間合いが絶妙で、思わず吹き出してしまった・・・。これって監督からの観客へのサービスと見たのですが、みなさんはどう感じられましたか? 

こういうお茶目な場面があるから、2時間映画は大賛成!

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毒女 悦子

韓国映画をみてハッと胸をわしづかみにされたことありませんか?
悲しい時つらい時に韓国映画を見て、心がほんのすこし救われたことありませんか? しあわせを感じたことありませんか?

わたしはたくさんあります。

韓国映画のもつ奥深さになぐさめられたり、息もできない胸苦しさを覚えたり、一日中その余韻に浸ったり、夢の中まで追いかけられたり。 韓国映画に流れるあたたかいもの、残忍なもの、切ない永遠のものに、 ずっとずっと恋をしています。

同じ気持ちの人たちとつながっていたい。

アラフィフ。老後が心配。
でも死ぬまで韓国映画を抱きしめているぞ。

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