スリルとサスペンス

ソル・ギョングの圧倒的な演技力!「殺人者の記憶法」(2017)

2019-09-21

娘の命を守れ!じじー殺人鬼と若造殺人鬼の死闘!

作品情報

●評価 4.5★★★★☆
●2017年製作
●上映時間 118分
●原題 살인자의 기억법(殺人者の記憶法)
●原作 「殺人者の記憶法」キム・ヨンハ
●監督 ウォン・シニョン
●脚本 ウォン・シニョン
●出演
ソル・ギョング、キム・ナムギル、キム・ソリョン(AOA)、オ・ダルス、ファン・ソクチョン、チョン・インギョム

あらすじ

キム・ビョンス(ソル・ギョング)は、幼い頃、軍人である父親の家庭内暴力が原因で父親を殺してしまう。殺害後、荒れ狂った家庭には平和が訪れる。警察にも捕まらず成長したビョンスは、表向きは獣医師として働き、裏の顔として世の中のクズ人間どもを殺害していく殺人鬼になる。

ある日、妻の浮気を見つけて逆上し、浮気相手と妻を殺すが、その時娘が実の子ではないことを知りショックを受ける。自分を慕ってくれる可愛い娘までを殺すことは出来ず、育てていく。その内にアルツハイマー病は進行し、日常の行動までに影響を及ぼすようになっていく。

そんな折、ビョンスは交通事故を起こし、追突した相手ミン・テジュ(キム・ナムギル)が最近世間を騒がしている連続殺人犯であることを直感する。トランクから血が滴っていたからだ。ミン・テジュはビョンスが警察に通報したことを機に、娘ウニ(キム・ソリョン)(AOA)に近づく。娘の命が危ない。

果たしてビョンスは娘を守りきることができるのか。



※基本、ネタバレなしで書きましたが、気になる方は、読まないことをお勧めします。また、シリーズで「殺人者の記憶法-新しい記憶」(後編とする)もありますが、

こちらの「殺人者の記憶法」のほうを先に鑑賞されることを断然おすすめします!


ゾンビかよ。ソル・ギョングのおっかない顔No.1の映画

韓国で24万部売れたベストセラー小説「殺人者の記憶法」(キム・ヨンハ著)を映画化したもの。

ベテラン俳優ソル・ギョングの作品はドラマを含めて何本も見てきたが、この映画の彼の顔は今までで一番おっかない!と思った。本当の殺人者ってこういうふうな顔してるんじゃないだろうか?目がイっちゃってます。

いくら17年前に殺人を止めたとはいえ、普通のじーさんの顔の下にある冷酷な殺人鬼の表情は、何年経っても消せないものなのか。彼がうつむいてギョロリとしただけで、まじこわかった。

ゾンビじゃありません。ソル・ギョングです

映画は、意外と楽しめた。
ジャケットを見ると、チープなクライム映画の感じがして期待しなかったが、意外と観客をうまく惑わしてくれたのでとても良かった。得した感あり。

ただ、この映画、過去と現在を行ったり来たりするし、主人公がアルツハイマーなので、いきなり記憶がぶっ飛んで、行動が中断したりする。コメディかと思うほど緊迫感がぶつ切れる時があり、要注意。

完全なネタバレは言いません。

ただ、この映画の良さは、他者を寄せつけないソル・ギョングの圧倒的な演技力にあるので、少々のネタバレがあっても気にせずにソル様の演技力を楽しんでいただければいいと思います。彼は魅せます。

ごるらぁああああ! じじー殺人鬼をなめるなよ!

1.現実を見て傾向と対策を立てる。せっせと筋トレに励みだすじじー殺人鬼

ソル様は今までどんな役もきっちり演じて来ましたが、今回も最高でした。

深いシワが刻まれた目尻、痩せてくぼんだ眼、疲れた肌に洗わない髪のベトベト感といった老人特有の容姿。アミダばばぁのようなカツラもよく似合っていて、そのまま吉本新喜劇に出演できるかと思わせる出来栄え。やばすぎる。

ビョンスは、将来、娘の迷惑になりたくないので、療養施設に入ろうと考えていた矢先に面倒な事件に巻き込まれていく。眠っていた殺人鬼のプライドが許さないのか、若い殺人鬼に立ち向かっていくじじー殺人鬼のプライドに敬服した。

思わず、ソル様がんばれー!
と肩入れしてしまったのは、この脚本のうまさだと思う。
ビョンス(ソル様)はテジュ扮する若い殺人鬼と比べると、体力的にはるかに分が悪いから味方したくなるのだ。

殺人鬼は、頭脳と力がなくてはならない。
ビョンスは、残念だがどちらも失っていく過程にある。
アルツハイマー病は彼から認識力を奪い、老齢化は彼の筋骨隆々とした体から筋肉を奪っていく。ビョンスは大いに焦った、これではいけない。

では、頭脳も力も失っていくじじー殺人鬼は若い殺人鬼に対抗するために、では何をしたのか?

はい。家で、せっせと筋トレしていました(笑)

わかぞーに負けるかーーーーーっ! 俺だって昔は最高の殺人鬼だったんだ!


腕立て伏せをしたり、りんごを片手で砕こうとしたり
(砕けないから最後には食べたり)。

コメディかよ。

一方、若くて力も頭脳もあるミン・テジュ(キム・ナムギル)は警察官でもある。
ビョンスが「あいつはあやしい。連続殺人犯だ。つかまえてくれ」と何度も警察に訴えても「まさか。テジュは警察官だぞ。ありえない」と相手にされない。しかもテジュは軽々と娘ウニのハートをつかみ、心理的にもビョンスを社会や家族から孤立させていく。

このように、何をするにも後手後手のじじー殺人鬼は常に不利な状況にあり、若造殺人鬼テジュは綿密な計画を立ててビョンスをじわじわと追いつめていく。

こうなったら観客はみな弱者の味方だ。
じじー、負けるなっ!と思わず拳を握った。

じじーあがく! おらあ、負けたくねーだ。

2.頭部強打とアルツハイマーでダブルパンチ! じじーイジメが過ぎる映画。だが殺人鬼は殺人鬼の気持ちを読めるんじゃ。

ちなみに、この映画のように、殺人者が殺人者と対峙させる構図はおもしろいと思った。しかも、ただの殺人者ではなく、「連続」殺人者である。快楽があるから連続するのであり、見つからないように巧妙に考える頭脳をもっているのが連続殺人者の特徴だ。彼らは殺しという快楽を何度も繰り返していたいのだ。

そんな連続殺人者は、連続殺人者の行動が当然読める。

連続殺人事件が起こった時、ビョンスは
「自分ならどうするだろう。どこに死体を運ぶか」

と考えた。すぐに近くの貯水池を思い浮かべた。

犯行後、犯人はなるべく早く死体を始末したい。一番近くて、死体が見つかりにくい場所は貯水池以外になかった。ビョンスが実際にそこに行くと、テジュが殺した女性の死体が埋められていた。案の定だ。

じじー殺人鬼は死体を発見するとやっぱりと思い、さすがに殺人鬼が自分の娘に触手を伸ばしたら大変だと焦る。かわいい娘を守るために、この連続殺人犯が次にどういう一手を打つか必死で読み取ろうとする。だが、アルツハイマーが邪魔をして、じじーは思うように考えられないし動けない。ここといった危機が迫った瞬間に記憶力が度低下し、無防備な赤子のようになってしまうのだ。

ぐぎぎぎとじれったくなってしまうが、超優秀だった元殺人鬼も寄る年波に勝てず、こうして老いぼれていく様を見るのも一興。アラフィフにはしみじみと来た。

記憶を危うくさせる理由はアルツハイマーでなくても、不慮の事故でも成り立つが、この映画では事故による頭部強打と経年によるアルツハイマーというダブルパンチでじじーを苦しめている。
アルツハイマーは、①記憶が出入りしながら、②悪化していくいう二つの特徴があるが、それが事故の後遺症に加えて起きた時、相当重篤な症状になるだろう。

ほんとうにこの設定はじじーいじめ以外の何ものでもない。
脚本むごすぎる。

この記憶の出入りと悪化という現象を見事に取り込んで、映画は観客をうまく惑わせていく。寄るところのない不安感。病気は容赦なく進行する。ビョンスが正気でいられる時間はあとわずかしかない。
クライマックス。現実と過去が複雑に交差し、一体なにが真実なのかわからなくなっていく時、観客も疑心という沼のような迷路に深く入っていく。

「一体、なにが真実なのか?」

「記憶とは真実ではないのか?」

セブンデイズでわたしたちをあっと言わせたウォン・シニョン監督が仕掛けるこの深くて暗い迷路。このメメントな罠に、どうぞ心ゆくまではまってください。

注目!今作の名脇役 - ファン・ソクチョン(황석정)さん

文化センター詩の講座受講生、チョ・ヨンジュ役

1971年2月2日、釜山広域市生まれ。
「子猫をお願い」「哀しき獣」「ある会社員」「哭声」など数々のヒット映画をはじめドラマに出演してきたソクチョンさん。今回の映画では、主人公ビョンスに好意を寄せる中年女性を演じているが、押しの強さが典型的な韓国アジュンマらしくビョンスをしつこく追っかける場面が印象的でした。名脇役ばんざい!

殺人者の記憶法、名シーン
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毒女 悦子

韓国映画をみてハッと胸をわしづかみにされたことありませんか?
悲しい時つらい時に韓国映画を見て、心がほんのすこし救われたことありませんか? しあわせを感じたことありませんか?

わたしはたくさんあります。

韓国映画のもつ奥深さになぐさめられたり、息もできない胸苦しさを覚えたり、一日中その余韻に浸ったり、夢の中まで追いかけられたり。 韓国映画に流れるあたたかいもの、残忍なもの、切ない永遠のものに、 ずっとずっと恋をしています。

同じ気持ちの人たちとつながっていたい。

アラフィフ。老後が心配。
でも死ぬまで韓国映画を抱きしめているぞ。

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